安房直子記念〜ライラック通りの会

童話作家 安房直子さんの世界を語り継ぐ

安房直子さんの作品世界は、時代を越えて多くの人の心によりそい続けてくれます。
その豊かさをまだ知らない子供たちや、若者、大人たちに、
安房直子さんの作品が広く読み継がれていってほしいと、私たちは願っています。
そのためのいろいろな活動をみなさんと一緒にやっていきたいと、この会を立ち上げました。


世話人 石川珠美 松多有子
スタッフ 永田陽二 野田香苗  イラスト 仁藤眞理子
  事務局 安房直子記念~ライラック通りの会 awanaoko.lilac@gmail.com

第2回全体会ご案内 ~朗読とお話と懇談~

 

4月9日(土) 2:00~5:00
保谷駅前公民館 第2集会室 参加費1500円  定員36名

 
朗読   安房直子作 「はなびらづくし」         秋元 紀子
お話 「花びらづくし」考~群生と孤影の幻想   石井光恵
懇談 「花びらづくし」の物語を中心に、またはどんなお話でも

      ~~~全国からの 皆様のご参加をお待ちしています~~~

 

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”するとこのとき、花ふぶきの奥から、しゃん、しゃん、しゃん、しゃん・・・・

ふしぎな音が伝わって・・・・”  第2回全体会は、「はなびらづくし」を語っていただきます。石井光恵さん(日本女子大学児童学科教授)の 学内誌に掲載された「はなびらづくし考」を読んだ世話人が、ぜひ!とお願いして、この企画が実現しました。


学生時代に、安房さんとも研究室で一緒におしゃべりをしていた仲の、きさくで誠実な先生でいらっしゃいます。 朗読は、<安房ワールドファンタジー 秋元紀子ひとり語り>を長年続けていらっしゃる 秋元紀子さんです。

折しもきっと桜は満開(のはず)。 みなさまそれぞれの桜をまとって、お集まりください。今回は、懇談の時間を長めに設けます。
 
お申し込みは、明日からお受けします。
①メールでawanaoko.lilac@gmail.com

②郵便で郵送版事務局(ネット上は非公開) までどうぞ。

会場の場所は、保谷駅前、西友の上です。
池袋から保谷(ほうや)までは、西武池袋線で20分前後です。

 

 

          ~~~~~

            ご 報 告      

  文 庫

そのイメージは。。。

安房さんの著書の書棚が並んでいる、夢に見る「文庫の部屋」。。。

こで静かに、安房さんの本、雑誌、単行本未収録作品を読んで。。。

お茶の時間になったら、安房さんが愛した紅茶とクッキーを頂きながら、

リラックスして話します、好きな安房作品のこと、自分のこと。。。

そして時には、安房作品についての話し合いや勉強会をしましょう。

安房さんの世界をもっと深く知りたい、分かち合いたい時に。。。

 

ライラック通りの会 文 庫 会 ≪1≫

~単行本未収録作品、絵本や雑誌の作品、を読む・語る~

20161月17日(日) 2:00~4:30  終了済

保谷駅前公民館 第2集会室 参加者15名
朗読 近江竹生 お話 蓮見けい 

 
プログラム

 *紹介 安房直子さんの絵本・雑誌作品の描画等4点を楽しむ

    きのはのおてがみ 朝倉攝 絵 =小林文庫蔵=
     昭和43(1968).12.1発行 「あそび」静岡福祉事業協会 8頁
     くすりやのこうちゃんに、うさぎから木の葉のお手紙がとどきました。こうちゃんは・・・

   あきのはまべ 林静一 絵 =小林文庫蔵= 
     1990.9.19発行 「いちごえほん」9 サンリオ 7頁  
     秋の浜辺は、夏の忘れ物がいっぱい。お母さんと子どものカニは、闇の中に光る花火に・・・
   ちいさなちいさなおひなさま  ひろかわさえこ 絵  =小林文庫蔵=
     1991.3.19発行 「いちごえほん」3 サンリオ 15頁
     世界でいちばん小さなおひなさま。ひな祭りの夜中に、あやこはおひなさまと・・・ 
   安房直子 残された物語 赤い鳥文学賞受賞記念  =小林文庫蔵=
     1994.8.1発行 「MOE」 白泉社 4頁     
     安房さんの世界を、写真と共に紹介。味戸ケイコさん、南塚直子さんの追悼の談話も掲載。

 

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*特集 安房作品が語る〝まわり″ 

 朗読    「ひぐれのひまわり」  近江竹生   

描画鑑賞  味戸ケイコ〝ひぐれのひまわり″イラスト3作

         (絵の説明文と順。アンダラインは、初出画)

「ひぐれのひまわり」1976(昭和51年).9「詩とメルヘン」サンリオp10-19

 1-「暗色のひまわり」 2-走って行く少年 3-流れるゆうぐれの色の川 

 4-胸騒ぎする少女 5-川辺と空をいく鳥 6-たゆたうボート

「ひぐれのひまわり」追悼1993(平成17年).6「詩とメルヘン」サンリオp40-43 

 1-帽子のひまわりの少女 2-不安げな少女の顔 3-暗い舟

「ひぐれのひまわり」2005(平成17年).12 「夢の果て-安房直子17の物語」瑞雲社

 p69-82 「詩とメルヘン」1974-1986にわたり掲載された作品17編のうちの1作。

 1-走って行く少年 2-「暗色のひまわり」3-白いシャツの少年 4-たゆたうボート

 

お話 「ひまわり」、「向日葵」、そして「ひぐれのひまわり」

   ~夏のおわりに、小さくしおれて枯れた・・・美のきわみ、ラスト (要旨 あり)

                         蓮見けい

 *懇談 みんなで語る 安房作品 

                           閉会4:50

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              ~ 会のようす ~ 

  こぢんまりとした、いい会でした。また次回、たのしくお話ししましょう!

 

 安房直子さんの絵本・雑誌作品の、描画等4点 は 新鮮な驚きがありました。

3,4歳ぐらいの子どもたちに、安房さんがそっと差し出した小さな作品たち。朝倉攝さんや林静一さんが、いわゆる月刊雑誌の絵本に絵を描かれていることに、感嘆しました。心に残る丁寧に語られたお話と絵、宝物のような雑誌です。(まだまだ、たくさんあるようです) 「安房直子 残された物語」には、素(す)の安房さんの笑顔の写真2葉が掲載されていて、珍しい追悼特集です。安房さんを悼むエッセイも感動。

 

朗読 「ひぐれのひまわり」 に、一同、胸を打たれました。 

朗読がはじまると、一瞬の間に光景が変わって、川沿いの土手に立つひまわりの娘の、ゆうぐれの情景が広がるようでした。「作品そのものを、大切に“舞台“にのせる」魅力的な朗読、という評判でした。

 

味戸ケイコ イラスト3作〝ひぐれのひまわり″・・作品の意図を、創造的に描いたイラスト、安房さんの物語との、共にかもす美をたんのうしました。

味戸さんには、今回の「イラスト3作」を楽しむ会の企画を、事前にお話させて頂きました。そのとき改めて、味戸さんはなんと、誠実さやナイーヴな感性を持って、創造的な絵を描かれておられるのだろう、と感動しました。H

圧巻は、1976年の、ぜいたくにイラスト頁を設けた作品、そしてリアルな墨色のひまわり。。。1993年に初登場した「ひまわりの少女」の表情の、強い印象は忘れられない、という人も。2005年の絵には、白いシャツの少年も描かれています。味戸さんの、作品への深い愛と読み込み、描写力には、圧倒されるという声もしきりでした。

 

お話 「ひまわり」、「向日葵」、そして「ひぐれのひまわり」 

作品の紹介とお話が、1時間では盛りだくさんで消化不良だった。ので、レジュメを、帰ってからゆっくり読みます、という方が多かったことは、残念、不十分でごめんなさい。 お暇なかた、以下の「要旨」お読みくださいね。 H 

              

             ~~~~~~

 

お話 「ひまわり」、「向日葵」、そして「ひぐれのひまわり」 要旨  

   ~夏のおわりに、小さくしおれて枯れた ・・・美のきわみ、ラスト  蓮見けい

              以下の転載、一部転載は ご遠慮ください

#1.「ひぐれのひまわり」と15年前の作品「ひまわり」、「向日葵」をつなぐ、深い孤独

 今回お話させて頂くことは、①「ひぐれのひまわり」には、その15年前に書かれた、 “ひまわり”をモチーフ(中心的題材)にした2つのリアリズム作品があること、②感想としてよく聞かれる “「ひぐれのひまわり」は幻想的でとても惹かれる物語だけど、「孤独と不安」が美しすぎるというか、怖い印象もあり、ラストもつらい・・・”  という2点についての私見を少々、考えてみたいと思います。

 これら作品の底に流れている「対象喪失(たいしょうそうしつ=愛するものや目標にしているものを失うこと)の空虚感を描写する」ことに、作者は何を意図しているか、かねてから私は考えてみたいと思いました。不十分ながら、若い日の安房さんの書かれた美しいリアリズムに光を当てることができたこと、またファンタジー「ひぐれのひまわり」の、ゴッホのひまわりにも匹敵する(!)、究極の美を賛美できたこともうれしく、レポーターをさせて頂いて感謝でした。

さて、これらの作品が書かれた時期は、リアリズム作品の「ひまわり」は安房さんが18歳、高校3年の時。1年ほど間をおいて、改作「向日葵」は1961.10です。「ひぐれのひまわり」は1976.9の作品で、前2作とは、15年の年月があいています。ちなみに、安房さんは25歳で結婚、31歳ご長男誕生、そして「ひぐれのひまわり」は33歳で、すでに3つの文学賞を受賞されたころの作品です。

 

#2.「ひまわり」、「向日葵」の、リアルな物語に描かれた 闇と光の二極  

*物語 「ひまわり」より 

「ひまわりが燃えるように咲いた夏の日、僕はその黄色い花の下に新しい友達を見つけた。」・・・病弱で友達もいない僕に、母は少女を連れてきた。シーちゃんは僕と同い年の5歳で、「赤ちゃけた縮れ毛で、その下に、まるでびっくり箱の人形のように大きな目が光っている。」・・・女の子は怒ったように僕を見返す・・・僕にはそのぎこちない沈黙の時間が、おそろしく長く感じられた。 

「三本目のひまわりが咲いた。・・・相変わらず彼女は、来たり、来なかったり、気まぐれで、他に友達のいない僕は家にいて、ひそかにそれを待ちわびていた。」・・・「いつの間にか夏も終わりに近づいた。ひまわりの茶色い芯が、からからになってきて、あんなに明るく、お日さまの花のように咲きほこっていた黄色の花びらは、しぼんでしまった。・・・いつの間にかシーちゃんは来なくなってしまった。」 ・・・「シーちゃんはどこか知らない遠い所へ越してしまっていた。やっぱり気まぐれに、さよならも言いに来ないで・・・。」

 

*「闇」と「光」の対極を、たくみな「美の風景」として描き、そのまま終わる・・・ 

 物語の最初から、「僕」とシーちゃんの関係性がハッキリ語られます。「僕」には、この元気いっぱいの新しい友達は、何となくそら恐ろしかったといいます。二人の反対の特性、二極(にきょく)が語られ、またどこか「下町の子」との“身分の差”も感じられます。

 伸びやかで生命力に満ちたシーちゃんと内気な僕。気まぐれな彼女が遊びに来てくれるのを、僕はひたすら待っているという構図が、全体を通して語られます。でも夏の終わりに、いつの間にかシ-ちゃんは来なくなり、ひまわりも芯がカラカラになって、花びらはしぼんでしまったのでした。

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 作品「ひまわり」は、硬質で巧みな語りや「僕」の心象風景などが描かれていて、18歳の安房さんは、まるで熟年作家ふうに健筆です。「光」にあこがれる「闇」のように、病弱で臆病な「僕」は、快活なシーちゃんとの、居心地のいい場所、調和を見つけたいと思うのに、すれ違う心の動きがリアルであればあるほど、読み手はそこにどうしようもない闇と光の対極(対立)を見ます。

ふつう、ひまわりという花は、夏の終わりに茶色い花芯が力強く隆起し、無数のタネを実らせます。華麗でドラマチックなひまわりの一生は、「生命」の象徴として語られることが多いようです。でも作者は、そこに「花の死」を感じたようです。それは、僕の視界から、あっという間に消えてしまったシーちゃんの死でもあり、ひそかにシーちゃんを待ち続けた僕の死でもあります。

 

*物語  「向日葵」より 

「向日葵(ひまわり)」は、安房さんが大学1年の1961年10月、「婦人文芸」に投稿、掲載されたもので、前作「ひまわり」を改作した作品です。物語は、前半(僕とけいさんとシーちゃんの交流物語)と後半(けいさんの少女時代の回想)に、分かれていますが、今回は後半部分は省略し、後日改めて、このあたりを考えることにします。

 

「シーちゃんが初めてやってきたのは、夏休みの始まった最初の日」。「そのとき僕は、ばあやのけいさん(ばあやと呼ぶには少し若い人だったけれど)に、無理矢理、薬を飲まされようとしていて」、泣きじゃくりながら抵抗していた。・・・そんなときにひょっと泣き顔を上げたら、垣根のそばのちょうど向日葵のところに、よその女の子が立っていたのだ。・・・

 ある日シーちゃんは、「あたしの家に遊びに来ない?」と誘ったが、僕がかぶりを振ると、「うわあいやだ。この子ひとりで来られないのよ」、「わーい弱虫、弱虫」と何度も何度もふしをつけて歌いながら、帰ってしまった。・・・

  砂遊びをしながら彼女は、キラキラ光る石を掘り当てた。・・・「これきっとねうちものよ」・・・「誰か昔の人が埋めたのよ」、だからかくしておこうと、 二人は向日葵の花の下に穴を掘った。「夏は終わりに近かったけれど、向日葵は、黄色い花びらをかっとお日様のほうに向けてシーちゃんの背丈よりも高かった。・・・「絶対誰にも言いっこなしよ」 彼女はちょっときつい目をして、小指をつき出した。向日葵の花をひい、ふう、みい、よお、と数えて、「五つ目の下よ。ちゃんと覚えといて」と言った。

「あれからまもなくけいさんは、暇をとってしまった。・・・僕が学校へ通い始めた頃、もうシーちゃんはどこかへ引っ越してしまっていた。・・・けれど夏が来ると、僕は見事に咲きそろった向日葵を見ながら、ふと、今にもあの藪睨みの女の子が垣根をくぐって、いつかの宝物を掘り出しに来そうな気がしてならない。」 

 

* リアリズムで語ることは、リアリズムでしか 解決を見いだせない・・・  

1. 行ってしまった けいさん、そしてシ-ちゃんも・・・

坊っちゃん」と「ばあや」という身分差が、二人の交流の土台になって、豊かに展開します。 シーちゃんは、この町に越してきたばかりで三年生。僕は、病気で二年遅れの一年生、でも二人とも、学校を休んでいます。この、勝ち気そうでちょっと藪にらみの大きな目をした女の子に、僕は何かしら怖いような気持ちを感じます。明るさや野性味にあふれるシ-ちゃんは、僕には、はらはらする気の置けない相手なのでした。

シーちゃんが引っ越してしまった後、僕は、(シーちゃんと言わず)あの藪睨みの女の子が、ふとやって来そうな気がすると、距離を置いた言い方で、でも彼女を懐かしんでいます。「暇」をとってしまったけいさんも、「切ないほどなつかしい」と、僕は言います。精一杯僕が生きた世界が、こうして無情に、引き裂かれていったのです。

 

2. 母とばあやのけいさんの関係と、作者の意図は? 

 前作「ひまわり」では、母親がシーちゃんを家に連れて来たのでしたが、本作では、僕に深く関わる人物は、若めの「ばあや」に替わっています。また僕が「白い割烹着の袖に顔をうずめ」たのも、本作では、「母」から「ばあや」に換わっています。さらに、前作では「母」は、シーちゃんを連れて来ただけの存在として小さく描かれていたのに、本作では「母代わりの関わり」をする主要な人物は「ばあや」となっています。母親は、2カ所に少しだけ登場するだけです。母の不在だけでなく、物語の終わりでは、ばあやも「暇」をとって僕の前からいなくなってしまいます。作者は、「母性」の喪失を、テーマとしてはっきり打ち出しています。

 

3.「人と人の和解や統合を、リアリズムで書くのは難しい」こと?

 作家の藤澤成光さんは、こう言われています。安房さんは、「こうした(リアリズムの)スタイルで物語を書くことは、このときたった一度きりで放棄している。彼女は、人と人とが孤独という状態で乖離する(はなればなれになる)意識の問題は、リアリズムの想像力を用いる形式の営みに、どうしてもしたくなかった」のだと。(「こころが織りなすファンタジー 安房直子の領域」 テラインク2004 ) たしかに安房さんは、「人と人が孤独を越え真の和解や仲良くなる=関係性の統合を、リアリズムで書くのは難しい」と、感じたのかもしれません。

 

#3.「ひぐれのひまわり」の圧倒的な魅力、「本当の死」だけが「再生」を示す 

*物語 「ひぐれのひまわり」より

ひまわりは、ひぐれに夢を見るのです。・・・「どこに行くの?そんなに急いで」/ある日の夢の中で、ひまわりは、さけびました。・・・けれど、少年には、花の声が聞こえないらしいのです。・・・それなのにひまわりは、もう幾日も同じ夢を見て、/同じ言葉を、少年にかけていたのでした。・・・あるゆうぐれ。/夢の中で、ひまわりは、ひとりの生きた娘になりました。

 

・・・「どこに行くの?そんなに急いで」/少年はぴたりと止まりました。/「聞こえたのね!」/娘はおどりあがりました。/ひまわりの娘は、明るく笑いました。/たちまち、彼女の心に、真昼の歓喜が、よみがえって来たのです。/輝く夏の太陽を、全身にあびて笑い続ける黄色い花の、かわいた明るさが、この娘の全身にみなぎりました。 

 

あたしも、おどりこになれたらいいと、ひまわりは思いました。/黄色いスカートをひろげて踊る自分の姿を、/娘は、うっとりと目にうかべました。/けれども、踊っているその足もとから、/太陽よりも、もっと赤い炎が、めらめら這いのぼって来て、/スカートを燃やすのです。・・・

「助けて。助けて、助けて」/少年は、ひくくするどく、そうさけびました。・・・「追いかけられてるんだ!」・・・その目は、おびえたように、大きく見ひらかれていました。・・・  けれどこの時、あのボートの中に、もう少年の姿はありませんでした。・・・ひまわりの娘は、/ほのかな水あかりの中にいつまでも立ちつくしていました。

 

このできごとが、ひぐれの夢の中の事なのか、本当の事なのか、それとも/夢と現実のまじりあったものなのか、ひまわりには、わかりません。/わからないままに、ひまわりはその夏をすごし、/夏のおわりに、小さくしおれて枯れました。

 

*「死と再生」への思いや 、ユングの「全体性の獲得」を越える、安房さんの勇気 「ひまわりの死」 

1.「対象喪失」のきわみ・・・孤独な魂が、もっと孤独に

 自分の声が少年に聞こえて、娘はおどりあがったのです。けれども真昼の歓喜がよみがえったのは、ひまわりの娘だけでした。少年は別の、町の劇場の「おどりこ」に、心を寄せていました。「あたしもおどりこになれたらいいのに」と、娘は切なく思うのです。その時少年が走ってきました。おどりこを刺した少年は、追われているのでした。

「かくれなさい、あのボートの中に」 娘は、少年を守ろうと決めます。追ってきた人々に、「あっちへ行ったわ。どんどん走っていったわ」と言い終えると、娘の心に、言いようのない喜びが、わき上がってきました。・・・けれどこの時、あのボートの中には、もう少年の姿は無かったのです。

対象喪失」のきわみ・・・孤独な魂が、もっと孤独になる物語、前の2作と同じテーマです。ひまわりの花は「死と再生」ではなく、ただむなしく「死」んだのでした。

 

2.「孤独と不安」の心の闇を 掘って掘って掘り続けて、「無意識との対話」を“自力”で行なう

3つの “ひまわり”が、あえて「タネを実らせないまま、むなしく死ぬ」物語として描かれているのは、理由があってのことのようです。それは、(「母性の喪失」そのものに深く向き合うことや、その服喪の作業・モーニングワークをおこなう以前の、)多くの芸術家の仕事がそうであるように、安房さんにも強い意図があったのだと思います。

それは、「孤独と不安」の心の闇を、勇敢かつ真摯に、掘って掘って掘り続けて、「無意識との対話」を、“自力”で行なうことです。

現代の創造性に富む作家や芸術家は「無意識の思い」を知って、“自力”で「無意識と意識の思いを、納得のいく一つのものに統合させる術(すべ)」を会得しているようです。「ひぐれのひまわり」も、その一つだと思います。安房さんの「無意識の意識化」を、藤澤さんは「手品のような魔法」と、言い当てています。

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3.ユングが創始した、「無意識との対話」をおこなうアクティヴ・イマジネーション 

/ 能動的想像法という技法もある

 人と人の真の和解や統合は、リアルな世界=意識の世界だけで解決しようとすると難しいことが多いのですが、C.ユングは、「対立した関係を一つに統合する」アクティヴ・イマジネーション、能動的想像を「技法」として行うやり方を創始しました。それは、「心に浮かぶイメージ(無意識の思い)に、熱心に能動的(アクティヴ)に働きかけ問いかけていくことにより、無意識と意識の思いの統合が得られる」というものです。アクティヴ・イマジネーション/能動的想像法は、実は有史以前から、占い師や祈祷師、シャーマンなどに使われていたといいますが、近代では創造的な芸術家たちによって、ごく自然に「ものを作り出す」過程で用いられています。

 

ゴッホも、安房さんも語る ・・・「本当の死」だけが、「魂の再生」を指し示す 

1.ゴッホの描くひまわりは、「太陽という理想」と「地上の現実」の両方を抱え持つ「引き裂かれた姿」

 哲学者のG.バタイユは、ゴッホの描く「ひまわり」を論評して、こう言っています。「「理想」という概念が 「自己の現実」という概念に対立するように、「天の太陽」は「枯れた花」に対立する。わかりやすく云えば、ひまわりとは、「太陽という理想」と「地上の現実」とに引き裂かれた、両義的(りょうぎてき)存在を象徴する」と。        www.seijo.ac.jp/pdf/graduate/gslit/azur/13/azur-013-07.pdf 

「両義的存在」とは、「二つの互いに反対の意味を同時に持つもの」のことです。ゴッホのひまわりは、「太陽という理想」と「地上の現実」の、「対立する両方を併せ持つ存在」を描いている、というのです。そこには、「この世的な美の概念」ではない、ひまわりが語る「引き裂かれた姿」が描かれている・・・そこに見手は、花の「真実味」による「新たな美」が創造されているのを見ます。

 

2.芸術家たちは、「引き裂かれた苦悩」をこそ、テーマに描く

 リアルな世界、つまり「意識」の世界では解決できない「問題」は、「無意識」との対話によってだけ、「統合」へと近づくことができます。例えば私たちの「意識」(自我)が「孤独や不安」を感じるとき、心の底の底にある「無意識の情動」にアクティヴ(能動的)に問いかけると、言葉を持たない無意識からのメッセージ(イメージ)は、「意識」にとっては思いもよらない、真実味が感じられるものとして、示されます。なぜならそれは、「意識」とは違って(常識や対人ストレスなど、「真実の思い」を歪曲したり隠したりしがちな「意識」とは違って)、純粋に「思いそのもの」をイメージ(心像、形象)として示すからです。

 しかし「孤独」、藤澤さんの言葉では「人との乖離」は、誰もがみんな(人類全体の)共有するテーマで、芸術家固有のものではありません。現実には、誰もが孤独を解消させて安心を得たいと望みはするけれど、「悟りを開いて安心立命する」ことは、なかなか難しいわけです。それゆえ、繊細さや感性の高い芸術家たちは、「引き裂かれる苦悩」を、テーマにして作品を描いています。

 

3.そこに私たちは、普遍的な「魂の再生」を指し示す光があると感じる

「ひまわりの少女」の場合も、そうです。一瞬、「言いようのないよろこびが、ゆっくりと湧きあがってきた」、それもつかの間、ボートの中には、少女が思いを寄せた少年の姿はなかった・・・。何という無情! そのとき作者の能動的想像は広がり、無意識の思いが聞こえたことでしょう。「ここにはどんな慰めも癒しもない。おまえはただ、本当に死ぬ(自我を無くす)のだ」と。

 そんな恐ろしいこと!と自我は反発します。自分を慰めたり癒したりするもの、例えばおいしいケーキだとかぬいぐるみだとか、過眠、過食…でもでも、・・・そのようなごまかしは、深い対象喪失には何の意味も無いことを、自我(自分)は知っています。 

そして、だんだん互いに折り合い、意識(自我)は無意識の提案を受け入れていきます。「・・・わからないままに、ひまわりはその夏をすごし、・・・小さくしおれて枯れました」 という、「喪失の極み」がここに描かれています。自己(自我)を非自我(自己主張する自分ではないもの)に明け渡した時に、ほんとうの「死」は完成し、そこに「再生」のための光が見え始めます。ゴッホ安房さんも、“自力”での能動的想像によって、この魂の再生の方法を知ったに違いないように思います。

そこには、あのゴッホのひまわりが放つ、無骨さ(痛み)からにじみ出る新たな「美」が、究極の光としてあらわれます。あるいはまた、このレジュメの最初に紹介した読者が、“「ひぐれのひまわり」は幻想的でとても惹かれる物語だけど、「孤独と不安」が美しすぎるというか、怖い印象もあり、ラストがつらい” という時、そこにこそ「孤独の極み」が、「美の力」となって現れます。その美は、読み手の私たちの魂を震わせるので、それとわかります。そこには、普遍的な光、「魂の再生」を指し示す光があると感じます。          

                                終わり

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=お知らせ= ご連絡は メールまたは郵送版事務局までどうぞ 🌷

安房直子さんが、西東京市「郷土にゆかりのある人々」の1人として紹介されます。

西東京市中央図書館の開館40周年記念誌「縁<ゆかり>」誌上で、安房直子さんが紹介されます。3月に発行予定の同記念誌は、中央図書館にて無料でお分けするそうですが、4月の全体会で、ご覧いただけます。掲載に当たり、ライラック通りの会・資料室が、原稿作成のお手伝いをさせていただきました。

②【訃報】会員・秋元瑤様(秋元富子様) 2016.01.09 86歳 にて、ご病気療養中のところ、お亡くなりになりました。心より ご冥福をお祈り申し上げます。

③「安房直子単行本未収録作品 勉強会」メンバー募集中です。

安房さんの「単行本未収録作品」に関心がある方、中心になってくださる方、募集中です。カンペキな収集と共に、どのような形での印刷・出版が可能か、話し合っていければと思います。(担当世話人 蓮見)

安房作品の 子どもたちを対象とした企画を実現できないかと考え中です。

まず少人数の子どもを対象に・・・と、有志の方と少しずつ計画中です。子どもとの企画に関心のある方、アイデアをお持ちの方、お申し出ください。

安房作品「ハンカチの上の花畑」のドラマ仕立ての朗読脚本を書いてくださる方を探しています「きくや」の酒蔵での、小人一家とよしおさんの物語が実現?・・・わくわくしますね。

⑥ カンパ、寄附を有難うございます。“財政難”の折、感謝です。

 ご送金は、下記にお願いいたします。

 ゆうちょ銀行  店番008 普通預金 口座番号3317591  名称ライラックドオリノカイ 

⑦ブログをご覧になりにくい方は、お申し出ください。

 「ブログ郵送版」をお送りします。

 

ひとこと さいごに…

♪ 次回は、4月の全体会を予定しています。このところ、会員の二人の方がサポートしくくださり、大変助かっています。みんなで作るみんなのための、安房さんの世界を広める会楽しむ会、になりますように。。。 

 

 

 

安房直子文庫の会《1》 安房作品が語る"ひまわり″

~単行本未収録作品、絵本や雑誌の作品を読む・語る~
1月17日(日) 2:00~4:30
保谷駅前公民館 第2集会室 定員30名 ぜひご参加ください。

 

プログラム
安房直子絵本雑誌作品と描画数点をプロジェクターにて映写
*特集 安房作品が語る〝ひまわり″
    朗読「ひぐれのひまわり」 近江竹生
    描画鑑賞 味戸ケイコ絵〝ひぐれのひまわり″3作(1976、1993、2005)   
    お話「ひまわり」、「向日葵」、そして「ひぐれのひまわり」 蓮見けい
*懇談 みんなで語る 安房作品

参加お申し込みは → awanaoko.lilac@gmail.com(企画・担当 世話人 蓮見けい)

 

2015年上半期会計報告 2015.11.23
ライラック通りの会、今年度上半期の会計報告をいたします 

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1. 2015年度上半期(4月~9月)の会計報告
収入
摘要 金額(円)
寄付(4名) 90,000
カンパ(1名) 1,000
4/5 立ち上げ全体会残金 2,102
8/2 こわい話を聞く会残金 111
送料負担(切手) 120
93,333
[寄付をいただいた方]    30,000円 2名、 20,000円 1名、 10,000円 1名
[カンパをいただいた方] 1,000円 1名
*寄付・カンパを頂いた方のお名前と金額はブログ上では省略、年度末に郵送版にて報告させて頂くことを検討中です。
 

支出

摘要 金額(円)
通信費(新規会の開催通知、ブログ郵送版) 9,124
謝礼(NPO見学、福傳寺手土産、ブログ開設・更新) 21,265
世話人交通費実費(12回分×2人) 17,394
会合費補助(会運営、8月の会打合わせ、ブログ開設等) 15,260
事務費(PCインク代、文房具類等) 5,929
慶弔費(小林氏香典) 10,151
79,123
収支
2015年9月30日現在 残高 14,210円

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2. 4月5日ライラック通りの会立ち上げ全体会の会計
収入
摘要 金額(円)
会費1000円×40 40,000
寄付(お菓子差し入れ代として) 10,000
50,000
支出
摘要 金額(円)
事務費(案内用はがき、封書用切手) 15,874
お車代(味戸さん) 10,000
拝借した絵の送料(保険料を含む)往復 3,812
出席者用お茶 4,590
出席者用お菓子(差し入れ) 10,800
雑費(紙ナプキン、紙コップ、ポリ袋) 1,338
世話人交通費実費(2人分) 1,484
47,898
収支
残金(ライラック通りの会の会計へ) 2,102円
*8月の会の会計報告は、ブログ2に掲載済みです。

 

花豆の会より引継ぎ金 62,368円
特別会計は、何らかの特別な支出が生じた時に用いるものとして別会計にします。

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4. ご寄付・カンパのお礼とお願い
 はじめに、ご寄付、カンパをいただきました方々に、心よりお礼申し上げます。ありがとうございました。
4月の会、8月の会において、皆さまからいただいた参加費は、ほぼ全額、それぞれの会の開催・実行に使わせていただきました。そのため、事務局運営のための諸経費は、もっぱら、ご寄付・カンパ等による収入に依存しております。
 今年度上半期の支出は、世話人等の活動費(打ち合わせ会会合費補助、交通費実費)のほか、「ブログ作成」のPC操作に関し、世話人が習得できるようになるまで、余分に経費がかかっています。この会の立ち上げ当初のブログは、世話人の一人小林さんが担当していました。
 この会は、ボランティア活動として運営していますので、現在、2名の世話人もPCや電話による打ち合わせ経費、8月の会等で機材を運ぶためや図書館めぐりのために車を出すなど、できる範囲で自費での奉仕はさせていただいております。
 今後有志の方々には、運営費のカンパ等(たとえば、年に1回1,000円程度)をお願いできればと存じます。
①会合の際に頂いても、②下記に記載のゆうちょ銀行に送金頂いても、③事務局(所在地詳細は、メールでお問い合わせください)に郵送して頂いても、結構です。
ご協力いただければ幸いです。どうぞよろしくお願い申し上げます。
世話人 蓮見けい 窪 龍子
 

=お知らせ= ご連絡は メールまたは郵送版事務局までどうぞ🌷🌷

①「日本女子大学に学んだ児童文学者たち」展のお知らせ(11/23メール送信済)

 12月19日(土)まで 於日本女子大学成瀬記念館。
 10時~16時30分(土曜~12時)。日・月・祝休館。
 あまんきみこ安房直子石井桃子いぬいとみこ、小薗江圭子、中村佐喜子、松田瓊子の各氏と7名の教員の展覧会。安房さんは、写真3葉と著書4冊が紹介されています。記念館2階右手の小ぢんまりした部屋に14人分の展示ですので、1人分はささやかです。おついでがおありでしたら、お出かけください。(メール担当 世話人 窪)

 

② 「安房直子単行本未収録作品 勉強会」 メンバー募集!

 1月17日安房直子文庫の会《1》に、勉強会メンバー希望の方々がご参加くだされば、今後のプランが立てられると思います。安房さんの「単行本未収録作品」に関心がある方、中心になってくださる方、募集中です。カンペキな収集(?)と共に、どのような形で「作品集」が可能か、話し合い検討していけるといいですが。(担当世話人 蓮見)

 

③ 安房作品の 子どもたちを対象とした企画を実現できないかと考え中です。

 安房さんの活動された西東京市の子どもたちや大人を中心に、安房作品を伝える機会を作りたいと思います。どういう方法で子どもたちを集めるかなど、最初の段階で、行き詰っています。アイディアやご意見など、お寄せください。

 

④ カンパ、寄附を、ご送金頂く場合は、下記にお願いいたします。

 ゆうちょ銀行 店番008 普通預金 口座番号3317591 名称ライラックドオリノカイ 

 

⑤ブログをご覧になりにくい方は、お申し出ください。 

 「ブログ郵送版」をお送りします。

 

ひとこと さいごに…
♪1月の会の次は、4月の全体会を予定しています。ところで、世話人2名だけでは、企画・実行が困難になってきました。色々なプログラムを、色々な方に中心になって行っていただけるといいな、と思って検討させていただいています。(H)

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盛り上がった 朗読会 於:東京・八王子

「夜のお寺で安房直子のこわ~いお話を聞く会」

 2015年8月2日、八王子の福傳寺で開催した「夜のお寺で安房直子のこわ~いお話を聞く会」は、50名の定員予定のところ、58名の方の参加がありました。

 安房さんのご子息 峰岸亨さんも、カナダから一時帰国中に聞きにいらっしゃいました。峰岸さんは、このような会に出席されるのは初めてとのことでしたが、終了後「この会は素晴らしかった。安房作品には普遍性があることを再認識した」と感想を述べられました。

1.当日のプログラム

(1)表紙

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(2)裏表紙

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2.朗読プログラム―出演者からのひと言

(1)沼のほとり   ★沢柳廸子

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"燁の会”と言う語りのグループで舞台公演を11年続けた。
その間「安房直子作品集」を2回。2回目は追悼公演だった。
ここに、安房さん自筆の葉書が八枚。半分はお礼状で4枚が上演許可への返信。どれにも「どうぞお使い下さい。ただし原文のままでお願いします」と書かれている。
作品を朗読する度、作者が選びに選んだ言葉の重みを感じている。

 

(2)奥さまの耳飾り   ★原郁子

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〈青い色〉と〈死の影〉 ――― 安房直子さんの作品に接するとき、この二つが心をよぎります。
子供のころ大好きだったアンデルセンの「人魚姫」を想い起こさせる本日の作品。若い小夜のあこがれが何を引き起こしてしまうのでしょうか・・・
安房さんの透明な世界を少しでも皆様に届けられたら・・・と思っております。

 

(3)谷間の宿   ★永田陽二

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峠の茶店の主人がイタチを追いかけて激走する表題作など、山に住む生き物たちと人間の交流を描いた連作集「山の童話・風のローラースケート」の一篇です。
安房作品中、屈指の異色作。茶店を訪ねて来た旅人のモノローグをお聞き下さい。
虫が苦手な方、ゴメンナサイ。
 

 

(4)木の葉の魚   ★瀧マキ

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安房直子さんの作品との出会いは、おなじみの「きつねの窓」でしたが、最初に人前で朗読させていただいたのは「鶴の家」でした。そこで初めて、大人のファンタジーだと認識し、すっかり魅せられてしまいました。安房作品は、人間への深い愛と哀しみが綴られているのではないでしょうか。
今日読ませていただく「木の葉の魚」は現代に、人間に、向けられた警告だと思っています。安房さんの想いが皆様に伝わりますように。
 

 

(5)天窓のある家   ★川島昭恵

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安房直子さんの作品に出会ったのは中学の時です
その面白さに一遍で引き込まれ、母と本屋さんに行って並んでる安房さんの本を全部買ってもらい読んでもらいました
そして、ますます大好きになり、今に至っています。
安房さんの世界は不思議で美しい。
そこに潜んでいる悲しさや切なさを見守る安房さんの優しい眼差しを感じます。
 

 

3.参加者のみなさんの感想(要約)

1.読み手の個性がよく出ていた。
2.バックの音がとてもマッチしていてよかった。楽しく聞かせていただきました。
3.とても良い企画だったと思います。
4.照明、BGMも効果的でよかった。出演者のみなさま、素晴らしかったです。
5.大変感動しました。自分で読んでいた時とはまた違う風景が浮かんでくる思いでした。
6.永田さん、大笑いですっかり引き込まれて楽しみました。川島さん、表情がよかった。
7.お寺の会場は面白いと思いましたが、お寺の雰囲気があまり感じられないような気がしました。皆さま、それぞれ個性あふれる朗読、素晴らしかったです。「天窓のある家」、大好きな作品ですが、川島さんの朗読が聞けて嬉しかったです。
8.企画としては面白かった。安房作品を改めて身近に感じることができたが、内容的には、作品の美しさと凄さ、そしてユーモアを現出できている朗読とそうでないものがあり、気になった。1982年「ショートショート」(初出)以来、「谷間の宿」は、安房作品も鏡花に近くなったと印象(今回の企画の中で一番怖い話)と期待していたが、もっと自然体で表現してほしかった。
9.読んだことのない作品だったのですが、伝わってきてよかったです。本堂のようなところを想像していましたが、冷房が効いてよかったです。
10.出入りの時、人がすれ違わないで、一人一人区切りをつけて出入りするとよいと思いました。作品に声がぴったりあう作品を選んだお話は、気持ちが入っていて心地よく聞けました。
11.お寺の境内でやってほしかった。暑くてもよいので。お寺の雰囲気が全くない。それと、音楽がいらないです。自分の中の安房直子の雰囲気と合わなくなるので、無い方がいいです。「木の葉の魚」と「天窓のある家」は、とてもとても良かったです。安房さんの最盛期の作品をチョイスして欲しかったです。
12.久々に安房さんの作品を楽しみました。でも、朗読がこりすぎると、作品の印象が変わってしまうのも感じました。
13.司会者の声が小さくて聞こえなかった。
14.いろいろな形の朗読会があってよいと思います。それが広がりにつながるのではないかと思うですが・・・。芝居に近い出し物、確かにその時は面白かったのですが、後になると安房作品そのものより、パフォーマンスの方が強く残り、違和感が残ります。でも、本当に企画はむずかしいと思います。

 

4.企画演出を終えて   ★永田陽二

真夏の暑い中、ご来場下さいました皆様、ありがとうございました。また今回の趣旨に賛同頂き参加して下さった出演者の方々にもあらためて御礼致します。本当にお疲れさまでした。
 まさかの「怖い話」限定の朗読会。最初は安房直子さんの本流とは少し離れてしまうのでは、との懸念もありましたが、個性的な演者五人の力で、安房作品の持つ輝きをしっかり客席に届けられた、との手応えを感じています。そして何より今回安房さんのご子息の峰岸亨さんに喜んで頂けた事が、最上の幸せでした。
 ともかく演出家の仕事は観客を驚かせドキドキさせ「観て良かった」と思わせる事。もしも次の機会がありましたら、さらなるワクワクをお届けしなければ、なんて考えています。今後は「教会で愛の話(ラブストーリー)」とか「冬の夜にあったか~い話」なんて案が出ております。実現出来ると楽しいですね。

 

5.8月3日朗読会の会計報告

収入:2000円×58人=116,000円、欠席者1名の方からの寄付 2000円
   合計118,000円
支出:①出演料(各出演者によるチケット販売お礼) 44人分×1000円=44,000円
   ②謝礼(会場、機材搬入、音響照明) 50,000円  
   ③事務費(チラシ印刷、プログラム印刷インク代、郵送料、封筒・用紙代、他) 10,907円
   ④参加者用ペットボトルお茶代 4,150円  
   ⑤会合費(打ち合わせ会合費、打ち上げ会補助) 8,832円  
   合計117,889円
残金:111円(ライラック通りの会の会計へ入れる)

 

6.お礼のことば   ★朗読会担当世話人 窪龍子 

 ライラック通りの会が4月に発足してわずか4か月で、今回の朗読会を開催することができたのは、何よりも参加してくださった皆様の安房作品に寄せる熱い思いによるものと、感動を新たにしました。
   4月の会の話し合いで、「お寺でのこわ~いお話を聞く会」の案が出て、企画演出を永田陽二さんにお願いしたところ、快諾してくださいました。会場は、瀧マキさんのご紹介で、福傳寺さんに提供していただくことができました。また、プロまたはセミプロの方という朗読者の募集に5人の方が応募してくださいました。さらに、安倍久美子さんは、永田さんと共に、音響と照明を準備し、当日の操作も引き受けてくださいました。チラシのイラストも安房ファンの方に無償で描いてもらうことができました。
 今回の朗読会が成功裏に終わりましたことに感謝し、この会に関わって下さったすべての方に、心よりお礼申し上げます。ありがとうございました。

 

7.次回の朗読会の予定

次回は、冬休みのあいだに、子どもたちを対象とした企画を実現できないかと考え中です。詳細が決まり次第、お知らせします。アイディアやご意見など、お寄せください。

 

                                    以上

  

=お知らせ  ご連絡はこちらに→awanaoko.lilac@gmail.com =

①「安房直子単行本未収録作品 勉強会」 メンバー募集!
 ***そろそろ、始めませんか? 担当世話人は、蓮見です***

  • 会場はとりあえず、保谷の公民館を予定。会合の日時は、11月初めごろでどうでしょう。継続開催日等は、参加メンバーで決めていきます。
  • 安房さんの「単行本未収録作品」に関心がおありの方、カンペキな?収集と共に、どのような形での「作品集」が可能か、話し合い検討していきませんか?

② ブログをご覧になりにくい方は、お申し出ください。

 「ブログ郵送版」をお送りします。

 

ひとこと…
♪秋の夜長を先がけて、コオロギがりゅりゅりゅ・・・とせわしなくうたっています。猛暑、経済や政治の混乱・・・ホントに大変な夏でした。いよいよ秋の始まり、安房さんの豊かな作品が、世界中のみんなに読まれますように(H)

-

「夜のお寺で安房作品のこわ~いお話を聞く会」の
チケット申し込みをどうぞ

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日時:8月2日(日)17時開演 19時終演予定
場所:八王子市明神町4-10-6 福傳寺
会費:2000円
アクセス:地図参照

 

チケットお申込みは以下までどうぞ(当日ご精算)。
定員(50名)になり次第、受付終了させて頂きます。

安房直子記念~ライラック通りの会事務局
awanaoko.lilac @gmail.com 
 

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第1回「安房直子記念~ライラック通りの会」が開催されました

 桜の花びらが小雨に舞う2015年4月5日(日)、第1回「安房直子記念~ライラック通りの会」を、西東京市保谷駅前公民館で、14:00~16:30 にて開催しました。参加者は44名、地元西東京市の方々はもとより、遠く仙台、甲府、長野、四国 などからもお集まりくださり、熱気にあふれたひとときを過ごしました。

                  

 みなさんから「安房さんの会が再び開かれるこの日を、ずっと待っていました!」、「花豆の会が休止してしまい、大変残念に思っていました。万難を排してお伺いします!」など、会の出発を心待ちにしていたというメールや電話をいただき、また、欠席の3名の方々から、「会の出発を祝して」というお手紙と共にご寄附を頂戴し、うれしいスタートになりました。

 

第1回「安房直子記念~ライラック通りの会」プログラム

  

◎「安房直子記念~ライラック通りの会」の概要(提案)・・・世話人 窪龍子 蓮見けい

◎ お話「安房直子さんと私」

  作家・安房直子の世界・・・・・・・・・・・小林卓さん

  原画等12作品を見せて頂きながら ・・・・ 画家 味戸ケイコさん

◎懇談 安房さんのこと、会に期待すること、近況・・・・みなさんのお話  

 

 定刻の14時に、会が始まりました。司会進行は世話人の窪龍子さんです。窪さんは、学生時代に安房さんと同人雑誌『海賊』でご一緒でしたが、童話は書かず、同人の作品を読むばかりの立場だったとのこと。昨年、実践女子大学人間社会学部教授(発達心理学)を定年退職し、世話人を引き受けてくださることになりました。 

             

 開会にあたり、メールが紹介されました。松浦かおりさんが不思議な体験をされたそうです。

 「私は小学生の頃から安房さんの童話が大好きでした。数年前に「安房直子コレクション」を入手したものの、仕事で忙しい毎日の中、コレクションはほこりをかぶっていました。それが今朝、掃除の最中にたまたま目に留まり、ベッドに腰かけて『ライラック通りの帽子屋』を読みました。ところがその午後、「ライラック通りの会開催」のお知らせのハガキが届いたのです。本当に驚きました。」

 

安房直子記念~ライラック通りの会」の概要(提案)の紹介 世話人  窪龍子 蓮見けい  

 世話人の蓮見けいさんは、元「花豆の会」の世話人の一人で、『海賊』で安房さんと一緒に活動していました。開業カウンセラーで、ユング派のアートセラピーもおこなっています。

 世話人から、以下の会の概要(提案)についての詳しい説明がありました。

そして懇談の時に、皆さんからのご意見やアイデアなどを伺いました。

 

安房直子記念~ライラック通りの会」の概要(提案)  詳細はこちら 

 

  ①[安房直子記念~ライラック通りの会の目標] について   

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  ②[会の活動の概要]について            

  ③[安房文庫、単行本未収録作品]について

  ④[会の構成員、世話人と運営スタッフ、事務局]について

  ⑤[会の運営費] について              

 

◎お話 「安房直子さんと私」  小林卓さん 

 小林卓さんは、安房作品を熱心に読んでこられた方です。3年前に、蔵書の安房直子さんの本や、外国で出版された安房さんの本等150冊近くを寄贈したいというお話があり、そのことがきっかけで、世話人を引き受けてくださいました。窪さんと同じ実践女子大学の文学部准教授として、図書館学を教えていらっしゃいます。

 

小林さんは、静かな声で話し始めました。そして、「私見を交えて言うならば、安房さんの作品は端的には“異界(もしくは端境)との接触”というものがテーマで、そこでは不思議な懐かしさと共に、人々の営みが色彩豊かに、またおいしそうな料理と共に語られる」と、聞き手を引き込んでゆかれます。安房作品を初めて知ったのは中学校で、教科書に『鳥』が載っていたとのこと。その文章の美しさについて触れ、「“浜の西陽は、大きな黄金の車でした。ぎんぎん音をたててまわるまぶしい光の輪でした”という表現は、いまも私の心の片隅にとどまり続けています」と語られました。安房さんの世界に全体的に光を当てたお話は、とても心に残るものでした。

お話の詳細は、以下を参考にしてください。 詳細はこちら 

           

◎お話 「安房直子さんと私」 画家  味戸ケイコさん

 味戸さんに特別にお願いして、味戸さんの原画やジークレー画を12点、会場に展示させていただきました。

瑞雲社発行の『夢の果て』の中の「声の森」等の原画3点や、『花豆の煮えるまで』のジークレー画9点です。絵のモチーフが、浮かび上がるようにリアルに感じられ、迫力のある美しさに、一同感動しました。

「詩とメルヘン」を創刊された やなせたかしさんが、味戸さんに、安房さんの作品に絵を描くようにとお話をくださったことがきっかけとなり、安房作品を知るようになったとのこと。やなせさんは、安房さんの作品の抒情性こそが、自分が「詩とメルヘン」にほしかったイメージで、ぴったりだと言われたそうです。そして「詩とメルヘン」で実現した安房さんと味戸さんの画期的なコラボが、安房さんが亡くなられたのちに、瑞雲社の『夢の果て-安房直子 十七の物語-』になったのでした。

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 味戸さんは淡々とした声で、「それは、本当にうれしいことでした」と言われました。けれど、その穏やかなお話の奥に、安房さんを敬愛する味戸さんの思いの深さが、垣間見えるような印象でした。

 

大型絵本 『夢の果て』 安房直子(文) 味戸ケイコ(絵) 1975.11発行サンリオ出版(絶版)

 

 休憩の間に、お菓子が配られました。                    

 愛媛や甲府からの参加者の方々や、安房直子さんのお姉様からの差し入れです。

 おいしくご馳走になりました。                       

 

 懇談  安房さんのこと、会に期待すること、近況など――みなさんのお話

  安房さんの作品に対する思いや、これからの会についてのアイデアなど、みなさんのお話が盛り上がり、時間が足りない感じでした。これからの会の活動がどう広がるか、楽しみです。その中で出たご意見を、メモの中から幾つかご紹介します。

桜井利枝:地元保谷にずっと住んでいます。この保谷駅前公民館を活動の本拠地にするために、「安房直子記念~ライラック通りの会」の代表者をお引き受けしました。「安房直子倶楽部」に参加。

Y:地元の西東京市で、朗読会「安房直子倶楽部」の代表として、活動している。

O:安房直子の研究をしており、この夏はイギリスで、安房直子についての研究発表をする。

M:中2の時に花豆の会に初参加、今は大学4年になった。ツイッターに「安房直子ボット」というものがあるが、誰がやっているのかな? 閲覧者が何百人もいる。安房さんの印象的なフレーズが書かれていたりして、安房作品を紹介するのにこういう方法もあるのだと思った。 

K:インターネットの会社で仕事をしているので、何かあったらお手伝いします。自分の意見などは、You-tubeやフェイスブックでどんどん発信していくといいと思う。

O:年齢を重ねるにつけ、“世の中”を知ってしまったという感じでいる。安房さんは、深いところに入って書いていたんだな、と思う。単行本未収録作品集、出るといいが。

S:ブラックな安房さんの作品を読む会はどうか? お寺での朗読会など、面白そう。

I:初参加。安房作品は楽しいだけではないと思う。お寺での企画、ぜひやってほしい。

T:八王子に知り合いのお寺がある。(笑)

O:安房さんと同い年。有志による紙芝居という企画に賛成。

U:朗読をやっているほか、もっぱら、“安房さんイノチ”で暮らしている。

W:K:「単行本未収録作品」に大いに興味あり。

S:小学生のころから花豆の会に参加してきたが、高校を卒業。進学を考えている。今後もずっと参加したい。

N:夜のお寺で、安房さんの怖い話の会をしたい。

N:朗読をしていて、安房作品も取り上げている。外国人にも日本のよさや言葉の美しさを知ってもらいたい。

K:安房作品をいちばん敬愛している。「詩とメルヘン」のベスト3と言われる安房作品たとえば「誰にも見えないベランダ」とか「日暮れのひまわり」など、偕成社の「安房直子コレクション」に収録されていない。残念だ。

 

 閉会後もお話が尽きず、4時30分ごろの散会となりました。 参加された方々からは、「宝石のような時間だった。噛みしめながら新幹線で帰ります」、「雨だったけれどわくわくしながら出かけてきた。本当にうれしい会だった」、「童話作家安房直子を越えて、安房直子さんご自身と出会えたような気がする会でした」などのお声をいただきました。

 皆さんとの話し合いで、次回は8月、ところは夜のお寺、「安房さんのこわ~いお話」を語る会、と決まりました。ぜひご参加ください。

 

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<謹んでお知らせいたします>
世話人の小林卓さんが、4月急逝されました。
突然のことにおどろき、悲しんでいます。
ただ、小林さんとこの会のはじまりをご一緒でき、
安房作品を愛する皆さんと充実した会を持てたことは、
ほんとうによかったと思っています。
ご冥福をお祈りいたします。
世話人 窪龍子 蓮見けい

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「お寺で安房直子のこわ~いお話を聞く会」を  以下のように開催します

 「花豆の会」はしばらく休止になっておりましたが、桜の花びらが小雨に舞う2015年4月5日(日)、第1回「安房直子記念~ライラック通りの会」を、西東京市保谷駅前公民館で、14:00~16:30 にて開催いたしました。

参加者は44名、地元西東京市の方々はもとより、遠く仙台、甲府、長野、四国 などからもお集まりくださり、熱気にあふれたひとときを過ごしました。

 (第1回ライラック通りの会のご報告は、こちら!)

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そして、第1回ライラック通りの会で、お寺で安房さんのこわ~いお話を聞きたいという要望がありましたので、それにもとづいて「第2回」の準備を進めています。

         

        「お寺で安房直子のこわ~いお話を聞く会」

        日時:8月2日(日)17時開演 19時終演予定

           場所:八王子市明神町4-10-6 福傳寺 

        企画演出:永田陽二さん 会場紹介:瀧マキさん

         

   本堂にはエアコンがないため、法事などが行なわれる地下和室を使用。

        背もたれのないない椅子50脚を並べる予定。

 

アクセス: 京王八王子駅から徒歩約2分、JR八王子駅から徒歩約3分

会費:2000円  チケットお申込みについては、後日お知らせいたします。

出演者:下記のとおり募集いたします。 

 

             = 出 演 者 募 集 =

1)今回は、有料のため、朗読等のプロまたはセミプロの方に出演をお願いします。ご応募は締め切りました。たくさんのご応募、どうもありがとうございました。

2)全体の時間が2時間であるため、出演者1人15分~20分で、5~6人程度を募集します。長い作品の場合は、ある部分をあらすじが分かるように短くまとめる必要があるかと思いますが、その場合は、事前に世話人までご相談ください。

3)出演ご希望の方は、作品名(第一希望と第二希望)と共に、6月6日までにお知らせください。なお、「谷間の宿」(『風のローラースケート』の中の一つ)は、永田さんに朗読をお願いしています。

4)会費の2000円の内訳:出演者の方には、可能な限りの枚数のチケットを、周りの方に販売委託していただきます。そのうち、1000円分は出演者への謝礼、あとの1000円分は諸経費(会場費、照明音響、運搬費ほか)にあてます。出演者に委託しないチケット代(会費)は、ライラック通りの会の運営費にあてます。

5)出演ご希望の方が多い場合、作品が重なる場合等につきましては、ご本人のご了解のもと、調整させていただきます。

6)リハーサルを7月29日(水)13時~21時の間(新宿 )で予定しています。

 

出演お申込みはこちらまで。  

awanaoko.lilac gmail.com  ★を@に変えてご送信ください

※メールアドレスが変更されていますので、ご注意を!

安房直子記念~ライラックの会 世話人 窪龍子 蓮見けい

 

  お寺で安房さんのこわ~いお話を聞く会、みなさま おたのしみに!

 

 

 

作家 安房直子の世界と「記念会」の計画     小林 卓

当会発足の思いと経緯について、『現代女性文化研究所』の会報に記事を書かせていただきました。

少々長くなりますが、こちらを引用し、ブログ開設のご挨拶とさせていただきます。よろしくお願いいたします。

 

1.略歴
 安房直子さんは、1970年代から1990年代にかけて活躍した日本のファンタジー作家である。1943年東京に生まれ、日本女

子大学附属高校を経て、日本女子大学に入学。同大学で1962年『目白児童文学』が創刊されると創刊号に「月夜のオルガン」を掲載。これが実質的な第1作目とされる。1965年、日本女子大学国文科を卒業。在学中から山室静氏に師事し、卒業後、同人誌『海賊』が創刊されるとそこに参加。以降、積極的に創作活動を展開する。
 1965年の『目白児童文学』の三号に「空色のゆりいす」を発表、師の山室静氏に「こんなのが十篇くらいたまったら、一冊の本にするといいね」と励まされ、児童文学の道に進む決心が固まったといわれている。
 1971年、『さんしょっ子』で日本児童文学者協会新人賞受賞。他に1991年、「花豆の煮えるまで」でひろすけ童話賞受賞のほか受賞多数。1993年、惜しまれつつ肺炎により逝去。享年わずかに50歳であった。

2.作品
 秋山恭子氏の労作の「安房直子著作目録」(後出 『7 めぐる季節の話』に収録)には、再販や外国語に翻訳されたものを含めて、2004年の時点までの作品が70ページにおよんでリストアップされている。これらの文章作品から代表的なものを収録した『安房直子コレクション』全7巻が偕成社より2004年に出版されている。
 このコレクションのそれぞれの巻につけられた題名が、端的に安房直子さんの作品内容を表していると思われるが、それは『1 なくしてしまった魔法の時間』、『2 見知らぬ町ふしぎな村』、『3 ものいう動物たちのすみか』、『4 まよいこんだ異界の話』、『5 恋人たちの冒険』、『6 世界の果ての国へ』、『7 めぐる季節の話』という構成になっている。私見を交えて言うならば、それは端的には「異界(もしくはその端境)との接触」というものがテーマであるといえる。そしてその接触はというと、日常のふとしたきっかけから、「小さきもの」が媒介物として印象的に使われて、人々は別の世界に誘われる(ファンタジーではこうした手法を「エヴリデイ・マジックという)。そして、異界では不思議な懐かしさとともに、人々の営みが色彩豊かに、またおいしそうな料理とともに語られる。
 代表作の一つである「きつねの窓」では、親を亡くした子ぎつねが親指と人差し指を青色に染めることによって、四本の指で形作られる「窓」が、異界への接点になる。こうした「窓」のイメージも多くの作品で語られる手法である。

3.私と安房直子さんと「記念会」
 私が安房直子さんの作品に初めて出会ったのは、1970年代の中学校の国語の教科書に載っていた「鳥」によってであった。「ひみつ」を耳の中に落とした少女が腕のいい耳鼻科に「ひみつ」を日が暮れるまでに取り出してくれるように依頼するその物語は、私を心地よく別世界に引き込んだ。また、そうした筋立てに加えて、文章の美しさというのも教えてもらった。少年と少女が待ち合わせるボートへ走る描写で「浜の西陽は、大きな黄金の車でした。ぎんぎん音をたててまわるまぶしい光の輪でした」という表現は、いまも私の心の片隅に留まり続けている。
 当時の私の国語の先生が、たまたま安房直子さんに会ったことがあり、「文章そのままの少女みたいな方ですよ」と言っていた。それから安房直子さんの作品を読み進め、集めていくうちに、長い年月を得て、雑誌論文等も含んで150冊ばかりになった。これを自分だけのものにしておくのはもったいないと、思っていたところ、安房直子さんの七回忌を機会につくられた「花豆の会」というのがあり、そこから『海賊』の同人だった蓮見けいさんと連絡をとることができた。
また筆者の勤務する大学の同僚だった先生も、学生時代に安房直子さんと『海賊』の同人仲間だったということを知り、偶然も重なりやがて、休会中の「花豆の会」を発展させ、「安房直子記念会」のような会をつくろうということになった。まだ準備の段階だが、安房直子さんの作品が広く読み継がれ、多くの人々の生きる力になるよう、いろいろなかたちで紹介することを意図した会を計画している。
 興味をお持ちの方は、awanaoko.lilac★gmail.com(★を@に替えて送信)までご連絡いただければ幸いである。

小林卓(実践女子大学文学部 准教授)


(『現代女性文化研究所 ニュースレター』第40号 2015年2月6日 より転載。掲載原稿に若干の加除修正を加えた。)

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