桜の花びらが小雨に舞う2015年4月5日(日)、第1回「安房直子記念~ライラック通りの会」を、西東京市保谷駅前公民館で、14:00~16:30 にて開催しました。参加者は44名、地元西東京市の方々はもとより、遠く仙台、甲府、長野、四国 などからもお集まりくださり、熱気にあふれたひとときを過ごしました。
みなさんから「安房さんの会が再び開かれるこの日を、ずっと待っていました!」、「花豆の会が休止してしまい、大変残念に思っていました。万難を排してお伺いします!」など、会の出発を心待ちにしていたというメールや電話をいただき、また、欠席の3名の方々から、「会の出発を祝して」というお手紙と共にご寄附を頂戴し、うれしいスタートになりました。
◎「安房直子記念~ライラック通りの会」の概要(提案)・・・世話人 窪龍子 蓮見けい
◎ お話「安房直子さんと私」
作家・安房直子の世界・・・・・・・・・・・小林卓さん
原画等12作品を見せて頂きながら ・・・・ 画家 味戸ケイコさん
◎懇談 安房さんのこと、会に期待すること、近況・・・・みなさんのお話
定刻の14時に、会が始まりました。司会進行は世話人の窪龍子さんです。窪さんは、学生時代に安房さんと同人雑誌『海賊』でご一緒でしたが、童話は書かず、同人の作品を読むばかりの立場だったとのこと。昨年、実践女子大学人間社会学部教授(発達心理学)を定年退職し、世話人を引き受けてくださることになりました。
開会にあたり、メールが紹介されました。松浦かおりさんが不思議な体験をされたそうです。
「私は小学生の頃から安房さんの童話が大好きでした。数年前に「安房直子コレクション」を入手したものの、仕事で忙しい毎日の中、コレクションはほこりをかぶっていました。それが今朝、掃除の最中にたまたま目に留まり、ベッドに腰かけて『ライラック通りの帽子屋』を読みました。ところがその午後、「ライラック通りの会開催」のお知らせのハガキが届いたのです。本当に驚きました。」
◎「安房直子記念~ライラック通りの会」の概要(提案)の紹介 :世話人 窪龍子 蓮見けい
世話人の蓮見けいさんは、元「花豆の会」の世話人の一人で、『海賊』で安房さんと一緒に活動していました。開業カウンセラーで、ユング派のアートセラピーもおこなっています。
世話人から、以下の会の概要(提案)についての詳しい説明がありました。
そして懇談の時に、皆さんからのご意見やアイデアなどを伺いました。
「安房直子記念~ライラック通りの会」の概要(提案) 詳細はこちら
②[会の活動の概要]について
③[安房文庫、単行本未収録作品]について
④[会の構成員、世話人と運営スタッフ、事務局]について
⑤[会の運営費] について
◎お話 「安房直子さんと私」 小林卓さん
小林卓さんは、安房作品を熱心に読んでこられた方です。3年前に、蔵書の安房直子さんの本や、外国で出版された安房さんの本等150冊近くを寄贈したいというお話があり、そのことがきっかけで、世話人を引き受けてくださいました。窪さんと同じ実践女子大学の文学部准教授として、図書館学を教えていらっしゃいます。
小林さんは、静かな声で話し始めました。そして、「私見を交えて言うならば、安房さんの作品は端的には“異界(もしくは端境)との接触”というものがテーマで、そこでは不思議な懐かしさと共に、人々の営みが色彩豊かに、またおいしそうな料理と共に語られる」と、聞き手を引き込んでゆかれます。安房作品を初めて知ったのは中学校で、教科書に『鳥』が載っていたとのこと。その文章の美しさについて触れ、「“浜の西陽は、大きな黄金の車でした。ぎんぎん音をたててまわるまぶしい光の輪でした”という表現は、いまも私の心の片隅にとどまり続けています」と語られました。安房さんの世界に全体的に光を当てたお話は、とても心に残るものでした。
お話の詳細は、以下を参考にしてください。 詳細はこちら
◎お話 「安房直子さんと私」 画家 味戸ケイコさん
味戸さんに特別にお願いして、味戸さんの原画やジークレー画を12点、会場に展示させていただきました。
瑞雲社発行の『夢の果て』の中の「声の森」等の原画3点や、『花豆の煮えるまで』のジークレー画9点です。絵のモチーフが、浮かび上がるようにリアルに感じられ、迫力のある美しさに、一同感動しました。
「詩とメルヘン」を創刊された やなせたかしさんが、味戸さんに、安房さんの作品に絵を描くようにとお話をくださったことがきっかけとなり、安房作品を知るようになったとのこと。やなせさんは、安房さんの作品の抒情性こそが、自分が「詩とメルヘン」にほしかったイメージで、ぴったりだと言われたそうです。そして「詩とメルヘン」で実現した安房さんと味戸さんの画期的なコラボが、安房さんが亡くなられたのちに、瑞雲社の『夢の果て-安房直子 十七の物語-』になったのでした。
味戸さんは淡々とした声で、「それは、本当にうれしいことでした」と言われました。けれど、その穏やかなお話の奥に、安房さんを敬愛する味戸さんの思いの深さが、垣間見えるような印象でした。
大型絵本 『夢の果て』 安房直子(文) 味戸ケイコ(絵) 1975.11発行サンリオ出版(絶版)
休憩の間に、お菓子が配られました。
愛媛や甲府からの参加者の方々や、安房直子さんのお姉様からの差し入れです。
おいしくご馳走になりました。
◎ 懇談 安房さんのこと、会に期待すること、近況など――みなさんのお話
安房さんの作品に対する思いや、これからの会についてのアイデアなど、みなさんのお話が盛り上がり、時間が足りない感じでした。これからの会の活動がどう広がるか、楽しみです。その中で出たご意見を、メモの中から幾つかご紹介します。
桜井利枝:地元保谷にずっと住んでいます。この保谷駅前公民館を活動の本拠地にするために、「安房直子記念~ライラック通りの会」の代表者をお引き受けしました。「安房直子倶楽部」に参加。
Y:地元の西東京市で、朗読会「安房直子倶楽部」の代表として、活動している。
O:安房直子の研究をしており、この夏はイギリスで、安房直子についての研究発表をする。
M:中2の時に花豆の会に初参加、今は大学4年になった。ツイッターに「安房直子ボット」というものがあるが、誰がやっているのかな? 閲覧者が何百人もいる。安房さんの印象的なフレーズが書かれていたりして、安房作品を紹介するのにこういう方法もあるのだと思った。
K:インターネットの会社で仕事をしているので、何かあったらお手伝いします。自分の意見などは、You-tubeやフェイスブックでどんどん発信していくといいと思う。
O:年齢を重ねるにつけ、“世の中”を知ってしまったという感じでいる。安房さんは、深いところに入って書いていたんだな、と思う。単行本未収録作品集、出るといいが。
S:ブラックな安房さんの作品を読む会はどうか? お寺での朗読会など、面白そう。
I:初参加。安房作品は楽しいだけではないと思う。お寺での企画、ぜひやってほしい。
T:八王子に知り合いのお寺がある。(笑)
O:安房さんと同い年。有志による紙芝居という企画に賛成。
U:朗読をやっているほか、もっぱら、“安房さんイノチ”で暮らしている。
W:K:「単行本未収録作品」に大いに興味あり。
S:小学生のころから花豆の会に参加してきたが、高校を卒業。進学を考えている。今後もずっと参加したい。
N:夜のお寺で、安房さんの怖い話の会をしたい。
N:朗読をしていて、安房作品も取り上げている。外国人にも日本のよさや言葉の美しさを知ってもらいたい。
K:安房作品をいちばん敬愛している。「詩とメルヘン」のベスト3と言われる安房作品たとえば「誰にも見えないベランダ」とか「日暮れのひまわり」など、偕成社の「安房直子コレクション」に収録されていない。残念だ。
閉会後もお話が尽きず、4時30分ごろの散会となりました。 参加された方々からは、「宝石のような時間だった。噛みしめながら新幹線で帰ります」、「雨だったけれどわくわくしながら出かけてきた。本当にうれしい会だった」、「童話作家安房直子を越えて、安房直子さんご自身と出会えたような気がする会でした」などのお声をいただきました。
皆さんとの話し合いで、次回は8月、ところは夜のお寺、「安房さんのこわ~いお話」を語る会、と決まりました。ぜひご参加ください。
<謹んでお知らせいたします>
世話人の小林卓さんが、4月急逝されました。
突然のことにおどろき、悲しんでいます。
ただ、小林さんとこの会のはじまりをご一緒でき、
安房作品を愛する皆さんと充実した会を持てたことは、
ほんとうによかったと思っています。
ご冥福をお祈りいたします。
世話人 窪龍子 蓮見けい