安房直子記念〜ライラック通りの会

童話作家 安房直子さんの世界を語り継ぐ

安房直子さんの作品世界は、時代を越えて多くの人の心によりそい続けてくれます。
その豊かさをまだ知らない子供たちや、若者、大人たちに、
安房直子さんの作品が広く読み継がれていってほしいと、私たちは願っています。
そのためのいろいろな活動をみなさんと一緒にやっていきたいと、この会を立ち上げました。


世話人 石川珠美 松多有子
スタッフ 永田陽二 野田香苗  イラスト 仁藤眞理子
  事務局 安房直子記念~ライラック通りの会 awanaoko.lilac@gmail.com

第3回全体会 ご報告 ~南塚直子さんをかこんで 絵本の紹介とお話と懇談~  

 

           2017年5月27日(土)13時30分~16時 

          於 西東京市保谷駅前公民館 第二集会室 

 

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 気持ちのいい初夏の陽気に恵まれ、南塚直子さんをお迎えしての全体会は参加者15名にて、和やかな雰囲気のうちに開催されました。安房直子さんのエピソードを中心に、南塚さんの魅力的なトークと、桜満開の絵本の読み聞かせ、そしてみなさんとの懇談は、盛り上がり、定刻を過ぎたのも気付かないほどでした。 

 

 

お話 「安房直子さんと私」 南塚直子さん(画家) 

 

 そもそものお二人の出会いは、南塚さんがご自分の個展の案内を、安房直子さんにお送りしたことがきっかけだったとのこと。安房さんは個展にはおいでにならなかったそうですが、それからだいぶ経ってから直接電話をかけてこられて、「南塚さんの個展のご案内の絵がとても印象深くて、好きでした。私のお話に挿絵を描いていただけますか」というお話を頂いたそうです。 

 

 「そのときのお話は『水仙の手袋』という、ベルマーク新聞に連載された小品3篇の挿画でした。その後岩崎書店から『青い花』が出版されたときに、初めて単行本の挿絵を描かせて頂きました。」 

 安房さんは、抒情的なファンタジーを書かれる方。その作品を読むと、自然にイメージがわいてきました。出会うべくして出会えた方」 と語られる南塚さんは、安房さんの6歳下で、このときは31歳だったとのこと。 

その後南塚さんは、ハンガリー美術大学に留学生として赴き、帰国後、小峰書店から出された安房さんの『やさしいたんぽぽ』のイラストを、描かれたそうです。 

 

・・・南塚さんの、謙遜かつ華やかなお話ぶりに、参加者一同は次第に引き込まれて行きました。以下、お話の一部をご紹介します。 

 

 「ところで、安房さんと私は性格も違うのに随分、仲良しだったと思っています。安房さんはシャイでつむぎ出される物語と同じ世界の人という印象でしたが、私はそういう面もあるが、どちらかというと旅行とか外に行くのが好きなたち。にもかかわらず、最初からうちとけたお付き合いをさせて頂いた。 

買い物に付き合ってくれる? と電話がかかってきて、銀座の人形展にお供をしたり、お母様に贈る指輪を選ぶのに一緒に行って、と頼まれたり。 

 

 安房さんはアガサ・クリスティーが好きで、ほとんど全部読んでいると言っていらした。ラストのどんでん返しや謎めいた世界が書かれているのが好きだと言っていらした。安房さんは、作品を書くときは最初にイメージが浮かび、それをいかに物語にするかという順序で書くと言われていた。画家が絵を描くときに近い、イメージを優先される体質を持っておられたように思う。 

 

 『うさぎのくれたバレエシューズ』の作品をご一緒させて頂いた後だと思うが、安房さんが喫茶店で、「私の両親は養父母なのよ」と言われた。「実母は英語の教師だったから、高校生のころは教えてもらいに行ったりもした」、とも。 

 

 安房さんは、色としては藍色がお好きだった。藍染の布を買って、それをマントに仕立ててもらった、と言って喜んでいらした。そんな時の明るい笑い声も、私は好きだった。私はこのような屈託のない安房さんのお人柄が好きだった。安房さんとは十二、三年お付き合いしたが、妹のようによくしていただいた。 

 

 私は68歳になったが、10年間ほどは体調の悪い時期もあった。でも、今は元気になり、今年は4作、銅版画の絵本2点、陶版画の絵本2点を並行して作っている。」 

 

 …南塚さんのお話はまだまだ深く、リアルで、お二人の共にされた時間が絵のように伝わり、参加者一同、感激しきりでした。 

 

 

大型絵本 ご紹介  「うさぎのくれたバレエシューズ」 

     安房直子作 南塚直子絵(銅版画) 

 

 ✿✿ライラック通りの会の元世話人、故小林卓さんにご寄贈頂いた大型本のご紹介 

✿✿ <絵本の読み聞かせ> 安倍久美子さん 

 

 「絵本の原型」とよく評される『うさぎのくれたバレーシューズ』。安房直子さんの素朴な物語と、色と豊かさの南塚直子さんの絵の世界。

  大型本をよくぞ入手された小林卓さん、いきなりの指名にもかかわらずたくみな、女優・安倍久美子さんの読み聞かせ、4人の絶妙なコラボでした♪ 

 

  

懇談♬・・一部をご紹介します。 リライト コウヨウさん 他 

 

Iさん:南塚さんの、ハンガリーや東欧でのお話を興味深く伺った。自分もポーランド

    に仕事で滞在していた時期のことが、とても懐かしく思い出された。 

 

KOさん:『てんぐのくれためんこ』と 『うさぎのくれたバレエシューズ』の物語

     は、“一生懸命頑張って、苦手なことができるようになる” というテーマが似

     ていると思った。 

     (私は中国から来日3年目の留学生だが、)安房作品は中国の若者にも、ず

     いぶん読まれている。安房直子の不思議でファンタジックな世界や、不安の

     描写なども、注目されている。 

 

Uさん:『うさぎのくれたバレエシューズ』の絵本の“読み聞かせ”を聞いて、安房さん

    は実際に桜で染めた色を試して、確認してから、お話を書いたというエピソー

    ドを思い出した。南塚さんが「花豆の会」の集りで話してくださったのだが、

    伺ってとても感動したことを思い出した。 

 

南塚さん:『やさしいたんぽぽ』は今、絵を銅版画でリメイクしている。この本は現在

     は絶版になっているが、同じ出版社から2018年1月に出版する予定。 

 

HAさん(世話人):ベルマーク新聞の、南塚さんが挿画を描かれた安房作品3作は、

        「西東京市中央図書館」の中の「郷土資料室」の、花豆の会が寄贈さ

        せて頂いた「単行本未収録作品ファイル」の中にある。 

 

 7月23日のライラック通りの会「うさぎ特集」の会場は田無公民館で、中央図書館とは棟続きなので、早めに行ってお読みになってはいかがでしょう。安房さんは西東京市の郷土出身の作家なので、ほぼ全作品が揃っている。私たちの会からも安房さんの単行本を100冊余寄贈した。 

 

Hさん:安房作品の中には、この『うさぎのくれたバレエシューズ』のように、にぎや

    かなシーンから、急に一人ぼっちになるシーンがよくある気がする。これまで

    安房作品をあまり読んでこなかったが、この会に出てもっともっと、読みたく

    なった。 

 

Sさん:「安房さんは、最初に絵や色のイメージが浮かんで、それから物語を書くこと

     が多いと言われていた」とのお話が、印象深かった。南塚さんの絵の立体感

     や、線の一つずつそれぞれの違いが、味わい深いと思った。 

 

Kさん:南塚さんのお話は、どれも感銘深かった。60歳のころは体調が悪かったとの

    ことだったが、今はよくなったと言われたことに勇気づけられた。自分も、ま

    だまだやれると思った。 

 

Mさん:安房さんとプライベートでもお付き合いされていたことを伺って、興味深かっ

    た。人形が好きだったこと、恥ずかしがり屋だったことなど、初めて聞いた。 

 

Aさん:南塚さんは安房作品を「絵」で表現していらっしゃるが、私たちは「朗読」で

    安房作品を表現していると思った。 

 

Nさん:安房作品の中のうさぎは、けっこう、こわいイメージの作品もあるように思

    う。私たちストーリーテラーズは、7月22日に子ども対象の会、23日にラ

    イラック通りの会で、安房直子作品の 「うさぎ特集」 、立体文学・朗読会~

    ちょっと不思議な語り芝居~をおこなう。.ぜひご参加下さい。 

 

Dさん:安房さんが養女でいらしたことをはじめて知ったが、興味深い気がしている。 

 

MAさん:中国語では、たとえば安房さんのお好きな「藍色」という言葉はないなど、

     訳しにくい言葉がある。でも、絵の表現は万国共通なので、安房さんの世界

     をそのまま楽しめる。 

     世の中には、かわいい絵や面白いだけの本が、いっぱい溢れている。子ども

     本位のお話や絵にせず、人間の気持ちをそのまま表現した作品を子どもに与

     えることは、子どもの想像性を豊かにすると思う。          

 

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