安房直子記念〜ライラック通りの会

安房直子さんの世界を語り継ぐ

安房さんの世界は、時代を越えて多くの人の心によりそい続けてくれます。
その豊かさをまだ知らない子供たちや、若者、大人たちに、
安房直子さんの作品が広く読み継がれていってほしいと、私たちは願っています。
そのためのいろいろな活動を、みなさんと一緒にやっていきたいと、この会を立ち上げました。


スタッフ 安齋明子 窪龍子 佐伯好江 永田陽二 蓮見けい  イラスト 仁藤眞理子 ブログ設定 黒田由美 

安房直子記念~ライラック通りの会事務局
awanaoko.lilac@gmail.com

安房直子作品によるビブリオバトル VOL.1  ご報告

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             🌷  🌷


「とてもいい企画だと思う」との、おほめの言葉をいただきました。
ほどよい緊張感の中で、5編の安房作品が力づよく語られました。安房作品に改めて命がふきこまれたようでした。
 参加者は総勢11名、和やかな雰囲気での新鮮なバトルでした。 

 
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ビブリオバトルは、「本を通して人を知る 人を通して本を知る」を旨としています。バトラーは、1人5分ずつ、お気に入り作品の魅力を語り、そのあと2~3分間のディスカッション時間を設けました。司会進行は安齋明子さん。

 


5人のバトラーの発表(本人による要約)

 

1.「ひめねずみとガラスのストーブ」   安齋明子

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 この美しいお話には3つのポイントがあります。
 ひとつめは、「かけがえのない子供時代。」
 ふたつめは、「人を愛することの美しさ、とその延長線上にある“結婚”の意味」を小さな読者、つまり子供たちに、平易な表現でわかりやすく教えている点です。              
 とりわけ、風の子のフーとひめねずみがガラスのストーブがきっかけで、意気投合し、自然に二人の生活が始まる、というその内容は児童文学でありながら、大人でなければわからない深い話ともとらえることができ、自分はガース・ウイリアムスの「しろいうさぎとくろいうさぎ」を思い出さずにはいられません。
 みっつめは、挿絵の美しさです。
物語のモチーフである「オレンジいろに輝くガラス製のすてきなストーブ」は、“小さなシャンデリア”という素晴らしい表現がされており、「こわれやすいもの、デリケートなもの」という、物語の趣旨とリンクし、読み手にとってこの物語を、さらに印象深いものとする重要な役割を存分に果たしています。
 最後に、この美しくも、切ない物語を、2011年初版発行の、新しい、現代の絵本で、ぜひお読みください。
 それはそれは、かけがえのない時間(タカラモノ)となることでしょう。

 


2. 「春の窓」   馬 僑霞(マ キョウカ)

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 今回紹介させていただいたのは「春の窓」という個人的に大好きな物語です。いつもながら、悲しみを温かさにかえる安房作品のマジック、この作品では、春の暖かさと明るさを感じて頂きたいと思います。
ある寒い冬の日、売れない絵描きさんの部屋をたずねてきたふしぎな猫の魔法で、壁に描いた「窓」のなかでは、暖かい春の風景が毎日現れます。
そこに絵描きさんは思いがけないものを見つけました…。
 この作品を初めて読んだのが、十何年前、中国で過ごした中学校の時代です。そして1年前に、すでに日本でに住んでいるわが家で「春の窓」にそっくりな不思議な話と出会いました。
 安房作品にあふれている日常生活と空想の世界に繋げるその幻想の力には、確かに時間と空間の制限を破るパワーがあると実感しました。これからもずっと、魔法がいつもこの世界のどこかに存在していることを信じたいと思います。
 ご覧になる皆様、この秋霖が降り始め、めっきり寒くなるこの時期に、どなたでも読みやすい「春の窓」の話をぜひ一度読んでいただきたいと思います。

 

 

3. 「小さいやさしい右手」   川島昭恵

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 魔物、魔法、意地悪な継母と姉娘、そして可哀想な妹娘、森の中で展開されるこのお話は、まるでヨーロッパの昔話の香りがし、同時に、弱者に対する温かな眼差しを感じます。 
 主人公である魔物がとても人間的で、心惹かれる。好意を持つ女の子を喜こばそうとし、また裏切られ、驚き、悲しみ、そして復讐を誓うのです。
 そして、ついに目指す相手と再会し、同時に彼女が自分を傷つけたのではなかったことを知り、また驚きうろたえるのです。これは正に人間の心を描いているように思えます。 

 この魔物と妹娘の再会の場面での短い台詞のやり取りは本当に素晴らしい。二人の真剣さに息を飲むような気がするのです。 場面が変わるところでは、歌が出て来ます。これがまたいい。特に声で表現する時、よく安房さんがぴったりなところに歌を入れてくれたと思います。私はこのお話を語らせてもらう時に自分なりに節を付けています。 

 この物語のテーマは、愛と許し、死と復活だと思います。この作品を書いてくだった安房直子さんに心から感謝しています。

 


4. 「だれも知らない時間」  

         孔 陽新照(コウ ヨウシンチョウ)

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 今日は、今まで読んだ安房作品の中で、深く心を動かされた『誰も知らない時間』を皆さんに紹介したいと思います。
 あらすじは、次のようです。岩かげに、200年も生きている大きなカメがいました。それでもそのカメは、まだあと100年ほど命が残っていました。ある時、漁師の良太は、一日に一時間ずつ、カメに時間を分けてもらうことになりました。そして毎日その時間を使って、村のお祭りのために太鼓を練習しました。一人の少女と出会って、だんだん物語は不思議な展開になって行きます…。
 心を惹かれるのは、「時間の不思議さ」です。人生はいろんな段階で、時間の流れの速さは違うように感じます。大人になったら、子どもの頃の時間の流れよりずいぶん早く時間がたつと感じることや、老人になったら、カメのように自分の時間は遅くて、退屈だと感じることが人生の不思議だと思います。
 また、物語に挿入された少女と母の話も安房直子さんが養女でいらしたことを連想させます。 
 病気で入院した母親に会うために、少女はカメの時間を借りて、毎晩一生懸命走って行きます。けれど、ある晩、病院に行くと母親の姿が消えてしまっていました。少女が母親を探している間に、借りた時間が過ぎて、カメの夢の中に閉じこめられてしまったのです。
この箇所を読んで、安房さんの母性への憧れと葛藤をひそかに感じました。 
 最後のシーンも深く印象に残っています。「生と死」の場面は極端で、強烈な対比によって描写されています。
 まさにインドの詩人の名句「生は夏の花のように、死は秋の葉のように」のように、取り返しのつかない人生の時間を感じて、どこから来たのか分からない悲しみがずっと心に響いています。 
 このすばらしい作品を、ぜひ一度読んで、じっくり味わってみてはいかがですか?

 


5. 「初雪のふる日」   蓮見けいf:id:lilac-dori:20171128092829j:plain

 「初雪のふる日」は、どこを切り取っても美しい詩、幻想世界の傑作です。ひとりの名前のない女の子の、異界とのふれあいと勇気の物語…それはわたしたちに、宝石のようなイメージの贈り物をくれる、ちょっと怖くて温かいお話です。
 ♫うさぎの白は、雪の白 片足、両足、とんとんとん・・・・ほろほろとふり続ける初雪は、冬の到来の不安な気持ちを伝えます。それは、雪うさぎに象徴される厳しい寒さの季節、死の世界へと連れ去ろうとする冬の舞台・・・ 
 ♫ 止まっちゃいけない、あとがつかえる。片足、両足、とんとんとん・・・うさぎたちの行列に巻き込まれて、女の子のほおは青ざめ、くちびるはふるえます。
死と生の転換は、少女が勇気を出して、「春のヨモギ!」と魔法の言葉を夢中で叫ぶことで起こります。にわかに花のにおいや小鳥の声が満ち、ヨモギの野原での再生の春の物語がはじまるのでした。もう、うさぎたちはどこにもいませんでした。

 

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 全員の発表が終わったあと、休憩時間を挟んで、全体での質疑応答、最終的なディスカッションの時間を設けました。
 いよいよ投票。参加者11名が投票しますが、プレゼンテーションの優劣ではなく、「最も読んでみたい作品、再読してみたい作品」を選びます。また、自分の発表には自分では入れないというのが原則です。どの作品もすばらしく皆さん、悩まれました。
 結果は、「ひめねずみとガラスのストーブ」「小さいやさしい右手」「誰も知らない時間」がそれぞれ3票ずつでした。票が割れましたが、どの作品も甲乙つけがたいということで、あえて1位のチャンプ本は選びませんでした。

 

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 会計報告   

収入 :参加費(1000円×5名) =5000 円
   会員からのご寄付 =10000 円
   合計 15000円 
支出 :参加者用のお茶 11本 =901 円
残金:14099 円
繰り越し金= 14099 円
*

*この繰り越し金は、ライラック通りの会の会計に繰り入れます。
*ご寄付,カンパを頂いた方のお名前は、ブログ郵送版のみに記載させていただきます。

 

 

 

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    バトルを終えて・・・・。

 


お知らせ
 今後、ライラック通りの会の企画が大きく変わります。
 行事は、春と秋の年2回。春の会は「直子の窓・〇〇の会」と称して朗読会や講演会などを開催します。秋の会は「安房直子作品ビブリオバトル」と題して、安房作品を鑑賞しあう会を開催することにいたしました。
 来年度の春の会は、「直子の窓・朗読会」として、2018年4月~5月に開催予定です。詳細が決まりましたら、お知らせします。
 また、来年度の春の会から、次の6名がスタッフとして会の運営を担うことになりました。

 蓮見けい、窪 龍子、佐伯好江、安齋明子、永田陽二、仁藤眞理子です。
 どうぞ、よろしくお願いいたします。