安房直子記念〜ライラック通りの会

童話作家 安房直子さんの世界を語り継ぐ

安房直子さんの作品世界は、時代を越えて多くの人の心によりそい続けてくれます。
その豊かさをまだ知らない子供たちや、若者、大人たちに、
安房直子さんの作品が広く読み継がれていってほしいと、私たちは願っています。
そのためのいろいろな活動をみなさんと一緒にやっていきたいと、この会を立ち上げました。


世話人 石川珠美 松多有子
スタッフ 永田陽二 野田香苗  イラスト 仁藤眞理子
  事務局 安房直子記念~ライラック通りの会 awanaoko.lilac@gmail.com

第2回全体会 ご報告  2016年4月9日

折しも満開の桜の季節。会場は、桜カラーもちらほら。。。

目をつぶると 風が吹いてきて、花びらが舞いしきるようでした。

 

f:id:lilac-dori:20160430122246p:plain

 

全体会は、朗読 安房直子作 「はなびらづくし」で始まりました。透き通った秋元紀子さんの声がふわっと広がり、さっそく聞き手をとりこにします。

まるで安房さんは、この声の主を予想して物語を書かれたのかしら?と思えるような。茶店のおかみさんである「私」や、あかり屋の奥さんの、明るい楽しげなやり取りが、見えるようです。桜林の桜の精たちが、甘やかな声で呼びかけ、現実世界のおかみさんたちと桜の精たちの、くったくのないコラボ、桜林の妖なイメージが、目の前にひろがります。。。

 

けれど、桜の花びらがぎっしりつまったまくらを買って、木の下で横になると、おそろしいことが始まっていったのでした・・・・

 

やがて、 しゃん、しゃん、しゃん、という音が響きわたり、五円玉の首かざりをきらめかせた馬が、桜の精たちを乗せた馬車を引いて、空を駆け登っていきます。・・・聞き手の私たちはふっと、秋元さんの演じる花びらづくしの世界から、我に返りました。心にのこる、朗読でした。

                                                   f:id:lilac-dori:20160430122327p:plain

 

休憩の合間に、お茶とお菓子が配られました。

1月に亡くなられた秋元瑶様のご遺族様から頂戴した緑茶を、ごちそうになりました。秋元さんは、昨年4月の全体会にご出席くださり、会の再スタートを喜んでくださったことが、しのばれます。また、有志の方がたがお持ちくださったお菓子も、おいしくいただきました。


  

                                           f:id:lilac-dori:20160430122539p:plain

 

続いて、石井光恵さんのお話 「花びらづくし考~群生と孤影の幻想」です。初めに世話人から、以下の話がありました。

石井光恵さんは日本女子大学の教授でいらっしゃいますが、学生時代は安房さんよりずっとお若かったものの、安房さんと同じく、山室静先生の研究室に出入りされておられました。そこでこの会では、石井光恵さんと呼ばせて頂くことを、お願い致しました。

石井さんは5年前、日本女子大の「日月」誌第8号(川端有子教授研究室発行)に、「群生と孤影の幻想~花びらづくし考」を執筆されたのですが、その作品論を読ませていただいた世話人が、ぜひとお願いして、この会でお話頂けることになりました。

以下に、その作品論からの一部抜粋を、ご了承いただいて、紹介させて頂きます。なお、8月末に発行予定のライラック通りの会の冊子(末尾の=お知らせ=に詳細)に、全文を掲載させて頂くことをご了解頂いています。

 

石井さんは、明るいお人柄で安房直子さんのこと、山室静先生のことなどエピソードを交えながら、爽やかにお話しくださいました。

そのお話しの趣旨は、『安房作品は、「花びらづくし」をはじめ、「きつねの窓」などいくつもの物語に、花や動物の「群生―見わたすかぎり、いちめん」の存在と、同時に「孤影― 一人ぼっち」の両方が存在する』という、「群生と孤影」の両義性についての、創造的な作品論です。丁寧で分かりやすいご指摘に、一同感銘を受けました。

 

「群生と孤影の幻想~花びらづくし考」 より  

・・・このように、安房直子のファンタジー世界(不思議が起こる世界)では、何ものかで埋め尽くされる広がりの場面に主人公は直面する。主人公が、自分を包み込んで広がる、あるいは対峙して視界いっぱいに広がるその情景を美しいと感じ、息を呑んだ瞬間に、そこで何事かが起こるのである。そして、そこには多くの場合、吹きわたる「風」が配される。息を呑むことで瞬時に硬直する世界に、吹く風によって揺らぎが生まれ、不思議が不思議を越えるファンタジー世界が成立する。といった構図が敷かれる。そして、主人公は一人ぼっち。

 

「覆い尽くす」、「埋め尽くす」ことで作り出される壮観な美しさと、その中にたたずむ孤影(一人ぼっち)は何を意味するのか。おそらく、群生に息を呑むとき、一人ぼっちの体内すべてが、その美しさに占領され、それに同化して自己を無き者としているのではないか。埋没することで満ちてくるものがあり、それは自己からの解放をもたらし、その甘美さが幸福感となって、主人公を呑み込む。その主人公の幸福感がファンタジー世界への転化を容易にし、読者への説得力となって作用するように思われる。

 

では、その中にたたずむ孤影は、どのような使命を与えられているのだろう。壮観な美に一点の曇りを呼ぶ、不安の種といえるだろう。壮観な美に、強烈なコントラストを醸すその孤影によって、無き者となるはずの者が無き者となり得ないことを、読者に思い起こさせる。ときとして背筋を走るぞくっと寒いものの正体は、この孤影に起因する。甘美に浸る身体に不安の兆しを起こさせるもの。それは捨てても捨てきれない個という、安房直子の「一人ぼっち」への感慨なのではないか。

 

                                                    f:id:lilac-dori:20160430122837p:plain

 

安房直子は、自分の幼い頃の姿を「子どもの頃どこへ行っても、よそ者の転校生として、ものめずらしくながめられ、やっと慣れてお友達ができると、また引っ越しという具合でした。その上、私は、なかなか他人になじめない子供でしたから、みんなが、にぎやかに遊んでいるのを、すみっこに、ぽつんとつっ立って、ながめていたものです。そんな自分の姿が、今一枚の絵のように鮮明に思い出されます。」といったように振り返ることが多い。

一人ぼっちの感慨は、破綻のない日常生活を粛々と営む安房直子に、ひたすら情念の埋め合わせを求めたのではないか。「一面の」「見わたすかぎり」とは、状況を俯瞰する孤影の理性でもあり、またそのもの以外視野に入らなくなっている孤影の理性喪失の兆しでもあるという両義性をはらむ。覆い尽くすもの、埋め尽くすものにすべてが、消し去られようとする中で、個の存在だけはどうしても消し去れないという相克に、安房直子ファンタジーの神秘が宿ると思える。歓喜を味わいながらも奈落の淵を覗く、群生に魅了される主人公の孤独が、安房直子の核に疼いていたのではないか。


(以上、作品論より一部抜粋させて頂きました)

 

                               f:id:lilac-dori:20160430123013p:plain

 

  休憩を挟んで、懇談に移りました。秋元さん、石井さんへの、沢山の賛辞が寄せられ    ました。以下に少々、皆さんのお話をご紹介させて頂きます。

 

Nさん:「花びらづくし」は、安房さんが32歳の時、同人誌「木の花」に発表された作              品で、私は編集を担当していたので、忘れられない作品です。主婦として母と                しての日常の生活をこなしながら、異界のイメージにも思いを馳せていた安房                さんの、そのことの重みを感じます。

Mさん:石井さんのお話には、同感するところが沢山ありました。気づいていなかった              ことも、お話を伺って、こういう見方もあると納得しました。

Iさん:「花豆の会」の最初の頃の集会では、“安房さんの気配”のようなものを感じて               いましたが、夫君の峰岸明さんが亡くなられた後からは、安房さんもいなくなっ            たように思えました。それが今日の会では、安房さんがなぜかまた、ここに戻っ           てきてくれたように感じられ、うれしかったです。

Aさん:石井さんの「群生と孤影」という視点に美しさを感じて、素晴らしいと思いま             した。また、もう一つの思いがあります。女性が何歳になっても持っているいわ             ゆる「オトメな心」を、安房さんも見つめて、それをファンタジーとして仕立て            たことが、この作品の大きな特徴だと思います。

 

    今回は懇談に時間を多く取ったのですが、魅力的でたのしいお話しが途切れず、

 活気に満ちたひとときを過ごしました。

              

                                             f:id:lilac-dori:20160430123058p:plain

                       

 

    ライラック通りの会 これからの予定

 

1. 9月の会

 「北風のわすれたハンカチ」をめぐって朗読と懇談

   ~たちばなゆきさんによる朗読と懇談の会~

    日時:2016年9月上旬の土日のいずれかの日の午後

    場所:西東京市保谷駅前公民館第2集会室(予定)

         懇談:参加者のみなさん全員

      たちばなゆきさん:朗読療法家・ナレーター・カウンセラー

        放送では、語り手としてNHKの朗読・ドキュメンタリー番組に多数出。

   「心に響く声のふしぎ」をテーマに、朗読公演活動をされています。

   

  *たちばなゆきさんからのメッセージ

  「北風のわすれたハンカチ」はとても素敵な作品です。ふだん見えなかった

         世界が物語りを通して、薄いベールの向こうに見えてきます。

         ぜひご一緒に心遊ばせてみませんか。

  *会場の申し込みと抽選は、7月に行われるため、現時点では日程を決めるこ

   とができないのです。会場が取れ次第、一斉メールや郵便でお知らせします。

 

2. 2017年 1月の会

  朗読を中心に、永田陽二さんによる企画を鋭意準備中

       日時:2017年1月21日(土)午後

       場所:日本女子大学同窓会館 桜楓会館

                     〈窓越しに木々の緑が見える落ち着いた部屋です〉

   

                                       f:id:lilac-dori:20160430123140p:plain

 

=会計報告=

1. ライラック通りの会 2015年度下半期(10月~3月)の会計報告

収入

摘要

金額(円)

前期残高

14,210

寄付(4名)

40,000

カンパ(多くの会員)

10,900

送料負担(切手)

1,132

1/17安房文庫の会残金

980

67,222

 [寄付をいただいた方]    20,000円 1名、 10,000円1名、 5,000円 2名

[カンパをいただいた方] 安房文庫に出席された多数の方々と送金して頂いた方1名

 支出

摘要

金額(円)

通信費(ブログ郵送版②③ほか)

6,707

謝礼(ブログ更新2回)

10,000

世話人交通費(4回×人)

4,536

会合費補助(今後の計画打ち合わせほか)

7,740

事務費

791

29,774

収支

2016年3月31日現在 残高

37,448

 

2. 117安房直子文庫の会の会計

収入

摘要

金額(円)

参加費(11名)

11,000

11,000

注)この会場でいただいたご寄付とカンパは、上記1のライラックの会の会計に計上しています。

支出

摘要

金額(円)

謝礼(朗読)

5,000

お茶代

1,380

資料代(カラーコピー)

3,640

10,020

収支

 残高

980

注)この残金は、上記1のライラックの会の会計に計上しています。

 

                                          f:id:lilac-dori:20160430123231p:plain

 

 

お知らせ= ご連絡は メールまたは郵送版事務局までどうぞ 🌷

.安房直子さんが西東京市「郷土にゆかりのある人々」の1人として紹介されました。

 2月に発行された、図書館の開館40周年記念誌「縁<ゆかり>」誌です。4月の全体会で、ご覧頂きました。原稿作成に当たり、ライラック通りの会がお手伝いしました。

 

2. 冊子「ライラックの小道」(仮称)1号を8月末頃に、発行予定です。

 安房直子さんに関する貴重な記録・原稿等を、会として収録、保存すると共に、広く会員の皆様にもお読み頂きたいと、企画しました。 1~2年に1回、 数冊のみの発行を考えています。

 

1号の主な内容<予定>は、次の通りです。

(1)会のあゆみ 

(2)転載原稿4篇(「日月」 2011.01発行 8号 特集安房直子  日本女子大学より)

   ① 群生と孤影の幻想~「花びらづくし」考   石井光恵

     4月5日全体会でお話いただいた作品論を、全文掲載。

   ② 安房作品の背景としてのご家族のことなど  蓮見けい

     実父母、養父母、直子さんご一家、の写真、および、第2回詩と童話祭りの

     集合写真も掲載、安房さんの原風景ともいえるエピソードも添えて紹介。 

   ③ 童話作家として歩んだ道 南史子

     少女の頃からの安房さんが、やがて数々の賞を受賞され、惜しまれつつ亡く

     なられるまでの、記録的エッセイ。

   ④ 『天の鹿』のみゆきと安房さん 生沢あゆむ

     “みゆき”に内在化されているように思える、純真無垢な魂と秘められた情熱

     の、素顔の安房さんを描いたエッセイ。

            

    *発行8月末予定 頒価未定(制作実費、カンパ、送料共) 予約申込

    (予約頒価1000円)オンデマンド印刷予定 約30頁 B5判( 182×257)

 

    *会員の方は、予約申し込み(6月末日まで)ができます。

     awanaoko.lilac ☆gmail.com (☆を@に変えて)または郵送版事務局迄  

    ①冊子予約希望、②お名前、③送付先(住所)、をお知らせください。 

    代金は、冊子の到着後にお振り込み頂きます。

 

 3. 安房作品の 子どもたちを対象とした企画を実現できないかと考えています

 子どもさんも楽しめる安房作品の「お楽しみ劇場」・・・参加人数が少なくても、

 年に1回とか、回数を重ねることにより、知名度を上げていく?関心のある方、

 アイデアをお持ちの方、お申し出ください。

 

4. 安房作品「ハンカチの上の花畑」のドラマ仕立ての朗読脚本を書いてくださる方を

  探しています

 「きくや」の酒蔵での、小人一家とよしおさんのドラマが実現?・・・古いホンモノの

  酒蔵でのお芝居・・・とすると、小人たちの場面は、CG映像?・・・

  どなたかお知り合い、いませんか? わくわく ^ ^。

 

5.  カンパ、寄附のご送金は、下記にお願いいたします。

 ゆうちょ銀行  店番008 普通預金 口座番号3317591 名称ライラックドオリノカイ 

 

6. ブログを読みにくい方は、お申し出ください。 「郵送版」をお送りします。

 

                                                f:id:lilac-dori:20160430123308p:plain

                 

ひとこと さいごに

♪ では、9月の会で、お会いできますように。お元気で!