安房直子記念〜ライラック通りの会

童話作家 安房直子さんの世界を語り継ぐ

安房直子さんの作品世界は、時代を越えて多くの人の心によりそい続けてくれます。
その豊かさをまだ知らない子供たちや、若者、大人たちに、
安房直子さんの作品が広く読み継がれていってほしいと、私たちは願っています。
そのためのいろいろな活動をみなさんと一緒にやっていきたいと、この会を立ち上げました。


世話人 石川珠美 松多有子
スタッフ 永田陽二 野田香苗  イラスト 仁藤眞理子
  事務局 安房直子記念~ライラック通りの会 awanaoko.lilac@gmail.com

盛況だった朗読会「冬の日に安房直子の心あたたまる話を聴く会」

 2017年1月21日、文京区目白台にある日本女子大学桜楓会館で開催した「冬の日に安房直子の心あたたまる話を聴く会」は、50名定員のところ、55名の方の参加がありました。

 

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1. 朗読プログラム~出演者からのひと言
1 ふろふき大根のゆうべ ~松本忍

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 皆様、あけましておめでとうございます。
私、 1935年生まれのイノシシです。猪突猛進の言葉通り、昨年あかね山で催された“ふろふき大根の夕べ”に参加してまいりました。囲炉裏の大鍋からは白い湯気がほやほやと立ち上っています。
この湯気を見たいために、私の心優しい仲間たちはふろふき大根を作るのだそうです。
安房直子の紡いだ白い魔法の世界の見聞記を、ぜひお聴き下さい。

 

 

2 秘密の発電所 ~中村悦子

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 安房さんのお話を読んでいると、いつの間にか不思議な世界に入り込んでしまいます。 そこでは動物達も気軽に声をかけてくれる―かえるも人間と同じ様な生活をしていたりして…そんなことを考えながら、次はどんな作品を読もうか楽しく探しています。

「百合の花の電気」に照らされたようなあたたかさをお届け出来たら幸いです。

 

 

3 雪の日のだんまりうさぎ ~永田陽二

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 現在は絶版の、幼年向け童話の一篇です。
「だんまりうさぎ」のガールフレンドは「おしゃべりうさぎ」。

くすぐったくなるような可愛いラブストーリーです。どうぞ童心に帰ってお楽しみ下さい。安房直子さんの作品にはいつも美味しそうな料理が出てきますね♪
 

    
4 ひぐれのお客 ~川島昭恵

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 「ひぐれのお客」のあの黒猫、大好きです。
 ちょっと生意気で、えらそうにしていて、我がままで繊細で、ちゃっかりしていて、それでいて憎めなくて。安房さんも猫がお好きだったのかしらと想像すると、猫好きの私はますます嬉しくなります。
色に音や香り、いろいろな感触が感じられて、いろんなことを猫に気づかせてもらえる気分になります。

 見えていた時のいろいろな赤を心に浮かべられて本当に楽しくなります。

 

 

5 ある雪の夜の話 ~八鍬よしこ

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 りんごに夢中な私の心に飛び込んできたこの話。りんごをこよなく愛した方へ捧げるにふさわしく、
 温かく優しさにあふれたこの作品との出会いはかけがえのない宝となりました。
青色が好きでお菓子作りの得意だった安房さん。カゴを片手にりんごを探す姿を偲びながら……

 

2. 参加者のみなさんの感想(アンケートの集計)
(1)今回の企画の開催を何でお知りになりましたか。
  ① ライラック通りの会からのメ~ルや郵送によるお知らせ----4名
  ② ライラック通りの会のブログ -----3名
  ③ 出演者からの案内            ------7名

(2)今回の企画について、総合的には、どのような感想をお持ちになりましたか。
  ① とてもよかった ---- 11名
  ② よかった   ----  2名

(3)今回の企画について、お気づきの点をどんなことでも、お聞かせください。
☆ とてもすてきな会でした。他のお話も聞きたくなりました。うしろのブラインドに

 うつった木のかげもよかったです。
☆ 使われた音楽そのものは素敵。音量のバランスはもっと工夫(事前の調整)を。
 最初に入った音楽は、話の集中を途切れさせました。皆さん、安房さんの世界を楽し

 ませていただき、楽しい時間をすごすことができました。ありがとう。

 川島さん、赤の様々な匂いや景色、音を楽しみ、新しい楽しみ方を発見させてもらい

 ました。お衣装の赤もとても素敵でしたよ。
☆ 川島さんの生き生きした表情とお洋服の赤はとても印象的でした。
 イノシシもカエルもウサギさんもお話の中からたちあがってくるみたいでした。
安房さんの作品のあたたかさが伝わってきました。
☆ 季節にあった安房さんの童話を聴くことができ、心温まる気持ちになりました。

 ありがとうございました。

 朗読は一人、本で読み進める時とちがい、より情景が浮かびあがってくるような感覚

 がありました。
 時折、流れる音楽がより情操豊かに感じられました。5人の方、それぞれがステキな

 世界観を作って語っていただき、するりと安房さんのお話の世界へ入り込めました。
☆ 大変良かったです。ありがとうございました。とても、とても良かったです。
 <ある雪の夜の話>は、今まで知らないお話でした。宮沢賢治を思わせる様なお話に

 感動しました。
☆ <雪の日のだんまりうさぎ>の朗読は本当に印象的で、思わず泣いてしまいました。

 とても感動しました。
☆ それぞれの方の声や雰囲気に作品がぴったりと合っていました。CDにしてほしいく

 らいでした。最高でした。目で読むのとはまた違った魅力に出会えました。
☆ もう少し少ないほうがよい。一つ一つはよかった・・・・・
安房さんのすてきな温かい作品の朗読、楽しませていただき、本当に幸せな気持ちを

 味わいました
安房直子さんの作品、ユ~モアがありおもしろかったです。出演者の方々もよかっ

 た!
☆ 都合があり途中から聞かせていただきましたが、どの作品も温かく、心を打つもの

 で、とても良かったです。
☆ とてもステキな会でした。他のお話も聞きたくなりました。後ろのブラインドにうつ

 った木の影もよかった。
☆ <ふろふき大根のゆうべ>の紹介文は、凝りすぎ。見聞記という表現もおかしい。も

 っと単純に書いた方がいい。
☆ <だんまりうさぎ>のセリフは、原文に忠実なのだろうと思うが、独り芝居の形式で

 はそこがはっきりしない。前もって説明があった方が、分かりやすいのでは? 
 <ある雪の夜のはなし>は、よく聴くと怖い、心を締め付けられる話だと感じた。あ

 の作品を心温まる安房作品としてとりあげた理由がわからない。


(4)次回以降の企画について、ご希望がおありでしたらお書きください。参考にさせていただきます。
  ☆ またこのような会を希望します。
  ☆ 冬の午後の陽ざしがまぶしかった。
  ☆ 演劇などのかたちで朗読を聞いていただければありがたいです。
  ☆ またこのような朗読会を聞いてみたいです。

 

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3. 1月21日朗読会の会計報告
収入: 2,000円×55名=110,000円、 ご寄付5,000円×2名=10,000円
   合計 12,0000円
支出: 108,845円
 内訳:  チラシ印刷  1,470円
     チラシ送料  2,789円
     会場費    21,492円
     出演者料(各出演者によるチケット販売お礼) 40,000円
     謝礼(構成演出機材借用、照明音響操作) 30,000円
     参加者用ペットボトルお茶代 4,860円
     会合費(リハ日スタッフ昼食おにぎり+本番日打合せ弁当代補助) 7,478円 
残金: 1,155円(寄付金と共にライラック通りの会会計へ入れる)

                                    以上

 

ライラック通りの会・朗読会のご案内と2016年度上半期の会計報告

1. ライラック通りの会・朗読会を開催いたします。

冬の日に安房直子の心あたたまる話を聴く会

構成演出:永田陽二

 

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プログラム:

1. ふろふき大根の夕べ~松本忍

2. 秘密の発電所~中村悦子

3. 雪の日のだんまりうさぎ~永田陽二

4. ひぐれのお客~川島昭恵

5. ある雪の夜のはなし~八鍬よしこ

 

日時:2017年 1月21日(土)13時半~15時半

場所:桜楓会館1号館 1階講義室(安房さんの母校日本女子大学の同窓会館)

   文京区目白台2-8-1 

   *JR目白駅より徒歩15分、都営バス(学05、白61)5分 

   *地下鉄副都心線 雑司が谷駅3番出口より徒歩7分

   *地下鉄有楽町線 護国寺駅4番出口より徒歩15分

参加費:2000円 

定員:50名    

定員に達しましたので、閉め切らせていただきました。多数のお申し込みをいただき、ありがとうございました。

(参加ご希望の方は、メールにて事務局まで、お早めにお申し込みください。

  なお、出演者のお知り合いの方は、その方を通してお申し込みください。)

  

2. 会計報告

1. ライラック通りの会 2016年度上半期(4月~9月)の会計報告

収入

摘要

金額(円)

前期残高

37,448

寄付

30,000

カンパ

4,000

送料負担(切手)

82

4月9日全体会残金

10,500

9月の会残金

14,000

合計

96,030

寄付をいただいた方々 10,000円2名 5,000円2名 

カンパをいただいた方々 2,000円2名

*寄付、カンパをいただいた方々のお名前は、昨年度と同様に、

 年度末の「ブログ印刷版」紙上に掲載させて頂きます。

 

支出

摘要

金額(円)

謝礼

11,220

通信費(ブログ郵送版ほか)

5,873

世話人,スタッフ交通費(8回×3名)

10,016

会合費補助(6回×3名)

15,500

合計

42,609

 

2016930日現在残高 53,421

 

2. 4月9日の全体会の会計報告

収入

摘要

金額(円)

参加費(1500円×17名)

25,500

 

支出

摘要

金額(円)

謝礼(2名分)

15,000

 

残高 10,500円

 

3. 9月たちばなゆきさんの会の会計報告

収入

摘要

金額(円)

参加費(1000円×19名)

19,000

 

支出

摘要

金額(円)

謝礼

5,000

 

残高 14,000円

 

注)2と3の残高は、上記のライラック会の会計に計上しています。

                             以上

 

1月の会「冬の日に安房直子の心暖まる話を聞く会」 出演者募集のお知らせ

 

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下記の要領で、1月の会の出演者を募集しています。

 

1. テーマ 
 
「(仮)冬の日に安房直子の心暖まる話を聞く会」
 演出・構成 永田陽二さん

2. 日時
 
1月21日(土)13時半開演、前日の20日に朝からリハーサル

3.
 会場
 桜楓会館(日本女子大学同窓会館)、リハーサルも同会場
 (JR目白駅から徒歩13分、又は都バス5分、追って詳細)

4.
 出演者ならびに作品名
 
 4~5名を公募 1人20~25

昨年の8月の会と同様、プロまたはセミプロの方の応募をお待ちしています。
時間制限とタイトルに合う安房作品を選んで、作品名とともにご応募ください。
応募者多数の場合は、演出・構成の永田陽二さんと世話人で調整させていただきます。

5.
 会費および出演料
昨年度の8月の会と同様、当日の会費は2000円を予定
出演料は、ご自身で呼ばれた(チケット販売された)観客の人数分×1000円

 6.
 公募締切と申し込み先
 10
月31日(月) 

ライラックの会のメールアドレスへ、郵送の場合は事務局宛にお申し込みください。

 

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たちばなゆきさんによる安房直子作品の朗読と懇談 ご報告 2016年9月4日

 

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<朗読 北風のわすれたハンカチ>

 ~どなたか音楽を教えて下さい。お礼はたくさんします~

 なんと、やさしく、あたたかい声なんでしょう。安房さんの自然の世界がぱーっと開けました。そして、カタカタ、カタカタ、トントントン・・・、思わず、熊と一緒に耳を澄ましてしまいました。初めてのお客に心うきうきして接待している熊の様子が、手に取るように分かり、映像の世界に入ったようです。

 北風が持ってきたトランペットの音色は、不思議なほど悲しくさみしい、まるで自分の心のようだ、と思う熊。それでも、音楽にあこがれ、まって、まって・・・

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 北風のおかみさんのバイオリンのメヌエットは、~ほそい糸がふるえて生まれる、ひとつひとつの音は、銀色のはしごをつくっていくのです。熊は、さびしい心をもったまま、その音楽のはしごを、ずんずんのぼっていけばよいのです。すると、さびしい心は、ふっと軽くなって・・・「音楽を聞いてると、心が月までとどくんだな、きっと。」            

 バイオリンの音色が、ひとりぼっちの熊のさみしい心を、こんなにも幸せにしてくれる、なんと見事な表現でしょう!

 北風のおかみさんも去り、さらにさみしくなった熊の前に現れたのは、青い馬にのった青い少女でした。イメージは、さらに広がります。女の子のもっている青いハンカチでの幸せな時間もつかの間、女の子も去り、泣きたいほどさみしさがました熊。でも女の子がわすれていった<青いハンカチ>で熊の心は一変します。

 この思いがけない展開に、熊と同じように私たちも、とっても幸せになれました。

 

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<懇談会>

 ~心にしみいるような朗読を聞き、しばらくは放心状態に・・・・・・

        そして、ひとりひとり、熱い思いが語られました~ 

  • ハンカチは、中国では馴染みがない。祖父との接点で、涙をふくもの、特別なも

    のとして使われる。ハンカチで作者が伝えたい事は、さみしさ、一人のさみしさ

    ではないか(中国からの留学生)

  • 安房さんの作品・・・心に音が残っている。いろいろな音、本物のように聞こえる。                          
  • 安房さん大好き!特に、ハッピーエンドが好き。女の子とホットケーキを食べる場面が好き。いつも明るくめげない熊。女の子との別れ、もっと、もっとさみしい。でも、(女の子のわすれた青いハンカチで)最高の眠りに入れた。幸せな熊の冬ごもり。 

  あたたかさ、やわらかさにつつまれた。

  • 読んでも、聞いても気持ちがいい。こんなに面白い作品はない。
  • 自分で読むのと、聞くのと、ぜんぜん世界が違う。
  • とてもいい気分になれ、とても良い一日でした。
  • 聞く世界は違う。ゆっくりした。青が好き。青の中にも、冷たい青とほっとする青がある。 
  • 橘さんの朗読は、第一声から広がる。目に見えないもの、自然の偉大さが、現実で体験できる。心の動きが止まってしまった、その~こころ~に必要。 
  • お芝居を見ているよう。
  • 自然の音を感じ取る。いろんな感情を感じ取れる。
  • 厳しい現実 <ズドーンと、お礼はもらう>も隠さずに、逃げずに表現。耳の中にハンカチを入れる ⇒ すごいアイディア。ゆっくり読む、素敵な言葉が心の中に入り、良さがよくわかる。
  • 熊の声、明るく、かわいい。北風のお父さんのイメージ、そんなにも悪い人ではない。楽器へのせつない願いから➡本当の音楽は、自然の音、それがしみわたる。
  • たちばなさんの朗読は、ソフトで音域広い。熊は、安房さん自身。大人なのだが、子どもっぽい、マジシャンでもある。
  • 安房さんの作品は、見えないものを見えるように、聞こえないものを聞こえるように表現している。
  • 今日のポスターや予告ブログでの、仁藤眞理子さんのさし絵、(安房さんは)気に入ったと思う。何度も読んだが、今日、更に新鮮に感じた。言葉を一つずつ、ていねいに注目して読む。ふと、女の子は、ハンカチを忘れたのではなく、熊のためにおいていったのかな、と思った。
  • 亨さん(安房さんのご子息)が、最近、楽器をやってみたいと話されていました。
  • 安房直子の作品は、小学三年の時に読んだ。子どもの心が曲がらない。この作品を広めていきたい。
  • 西東京市で、~安房直子クラブ~を開催しています(4~5名)。身近なところから広めていきたい。
  • すごくいやされた。いやな思い(言葉で傷つけられる)がいやされる。~メヌエット~のところの表現は、イラストのイメージ。心にしみた。
  • 読んで感動しました。~泣きたいのをじっと我慢して~別れがわかっていながらラストの、数をかぞえる熊の心。声を心に届けるということが、たちばなさんの朗読でよくわかりました。
  • 安房さんの感性の豊かさ。安房作品の中にあるさみしさ、は何だろう?と気になっていた。さみしさ⇒雪、木の葉にも音がある。自然の音に気づかされた。
  • 自分の生活と重なって聞けて、よかったな~。自分で読むと、ただの熊になってしまっていた。
  • 安房作品は、心はいくつになっても成長するんだな、と気づかされた。子どもは、アニメに偏る。熊の様子や青い色が目に浮かびます。テレビでもこのような作品を取り上げてほしい。
  • 登場人物が先生(たちばなさん)にのりうつっている。
  • 野菜を育てているが、野菜に声掛けをすると、~おいしいよ~とか返事がかえってきます。自然と一体になれるのです。

 

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 <懇談会での たちばなさんのお話しをまとめました>             

一音一音大事に読む。言葉には魂がある。安房さんの作品は擬音が多い。雪の音、キキョウの揺れる音=見なくてもわかる。日本人は音に繊細な民族。音と心。音によって心理が変わる。安房さんは、日本語の音の響きの良さがわかっている。だから、音を大事に大事におくりたい。美しい言葉を伝えたい。(イメージをおくる)

  • 五感をとぎすますということ=聞こえない音に耳をすます=本当に感じる、本当ににおう。現代人が忘れているこのことを、安房作品は気づかせてくれる。
  • 自分の心の中に入っていくキーワード。

   :ハンカチ~大事なことに気づかせる一つのきっかけ

   :北風の父母~世の中の現実を教えるための存在。時間の大切さ、世の

         中の仕組みを学んだ上での心が自立していく物語。

  どう感じた?心の持ち方⇒ばらばらだった心がまとまってくる。

  • 心が満たされる=どういうことなのか?何に救われるのか?

   :自然の中の音を作品を通して感じてもらえる。

  • 言葉・声は相手への贈り物。人間関係をきずくのにとても大切。

   :声はいろいろに描ける。受け取り方もいろいろ。

   :明日への希望にもなれば、人を陥れることにもなる。

 

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たちばなゆきさんによる安房直子作品の朗読と懇談の開催のお知らせ

 

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     安房直子記念~ライラック通りの会の皆さま

   暑さが厳しいですが、お変わりありませんか?

 9月の会のお知らせです。ご参加をお待ちしています。

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 たちばなゆきさんによる~朗読と懇談     

   安房直子「北風のわすれたハンカチ」

        9月4日(日)14時~16時半

  西東京市保谷駅前公民館 第2集会室(西武池袋線

  参加費1,000円 参加申し込みは下記にどうぞ。

   メール:awanaoko.lilac@gmail.com

 

                たちばなゆきさん

       朗読療法家・ナレーター・カウンセラー

      放送では、語り手としてNHKの朗読・

                                  ドキュメンタリー番組に多数出演。

  「心に響く声のふしぎ」をテーマに、

                                         朗読公演活動をされています。

   

  たちばなゆきさんからのメッセージ

 「北風のわすれたハンカチ」はとても素敵な作品です。

         ふだん見えなかった  世界が物語りを通して、

         薄いベールの向こうに見えてきます。 

         ぜひ、ご一緒に心遊ばせてみませんか。

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第2回全体会 ご報告  2016年4月9日

折しも満開の桜の季節。会場は、桜カラーもちらほら。。。

目をつぶると 風が吹いてきて、花びらが舞いしきるようでした。

 

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全体会は、朗読 安房直子作 「はなびらづくし」で始まりました。透き通った秋元紀子さんの声がふわっと広がり、さっそく聞き手をとりこにします。

まるで安房さんは、この声の主を予想して物語を書かれたのかしら?と思えるような。茶店のおかみさんである「私」や、あかり屋の奥さんの、明るい楽しげなやり取りが、見えるようです。桜林の桜の精たちが、甘やかな声で呼びかけ、現実世界のおかみさんたちと桜の精たちの、くったくのないコラボ、桜林の妖なイメージが、目の前にひろがります。。。

 

けれど、桜の花びらがぎっしりつまったまくらを買って、木の下で横になると、おそろしいことが始まっていったのでした・・・・

 

やがて、 しゃん、しゃん、しゃん、という音が響きわたり、五円玉の首かざりをきらめかせた馬が、桜の精たちを乗せた馬車を引いて、空を駆け登っていきます。・・・聞き手の私たちはふっと、秋元さんの演じる花びらづくしの世界から、我に返りました。心にのこる、朗読でした。

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休憩の合間に、お茶とお菓子が配られました。

1月に亡くなられた秋元瑶様のご遺族様から頂戴した緑茶を、ごちそうになりました。秋元さんは、昨年4月の全体会にご出席くださり、会の再スタートを喜んでくださったことが、しのばれます。また、有志の方がたがお持ちくださったお菓子も、おいしくいただきました。


  

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続いて、石井光恵さんのお話 「花びらづくし考~群生と孤影の幻想」です。初めに世話人から、以下の話がありました。

石井光恵さんは日本女子大学の教授でいらっしゃいますが、学生時代は安房さんよりずっとお若かったものの、安房さんと同じく、山室静先生の研究室に出入りされておられました。そこでこの会では、石井光恵さんと呼ばせて頂くことを、お願い致しました。

石井さんは5年前、日本女子大の「日月」誌第8号(川端有子教授研究室発行)に、「群生と孤影の幻想~花びらづくし考」を執筆されたのですが、その作品論を読ませていただいた世話人が、ぜひとお願いして、この会でお話頂けることになりました。

以下に、その作品論からの一部抜粋を、ご了承いただいて、紹介させて頂きます。なお、8月末に発行予定のライラック通りの会の冊子(末尾の=お知らせ=に詳細)に、全文を掲載させて頂くことをご了解頂いています。

 

石井さんは、明るいお人柄で安房直子さんのこと、山室静先生のことなどエピソードを交えながら、爽やかにお話しくださいました。

そのお話しの趣旨は、『安房作品は、「花びらづくし」をはじめ、「きつねの窓」などいくつもの物語に、花や動物の「群生―見わたすかぎり、いちめん」の存在と、同時に「孤影― 一人ぼっち」の両方が存在する』という、「群生と孤影」の両義性についての、創造的な作品論です。丁寧で分かりやすいご指摘に、一同感銘を受けました。

 

「群生と孤影の幻想~花びらづくし考」 より  

・・・このように、安房直子のファンタジー世界(不思議が起こる世界)では、何ものかで埋め尽くされる広がりの場面に主人公は直面する。主人公が、自分を包み込んで広がる、あるいは対峙して視界いっぱいに広がるその情景を美しいと感じ、息を呑んだ瞬間に、そこで何事かが起こるのである。そして、そこには多くの場合、吹きわたる「風」が配される。息を呑むことで瞬時に硬直する世界に、吹く風によって揺らぎが生まれ、不思議が不思議を越えるファンタジー世界が成立する。といった構図が敷かれる。そして、主人公は一人ぼっち。

 

「覆い尽くす」、「埋め尽くす」ことで作り出される壮観な美しさと、その中にたたずむ孤影(一人ぼっち)は何を意味するのか。おそらく、群生に息を呑むとき、一人ぼっちの体内すべてが、その美しさに占領され、それに同化して自己を無き者としているのではないか。埋没することで満ちてくるものがあり、それは自己からの解放をもたらし、その甘美さが幸福感となって、主人公を呑み込む。その主人公の幸福感がファンタジー世界への転化を容易にし、読者への説得力となって作用するように思われる。

 

では、その中にたたずむ孤影は、どのような使命を与えられているのだろう。壮観な美に一点の曇りを呼ぶ、不安の種といえるだろう。壮観な美に、強烈なコントラストを醸すその孤影によって、無き者となるはずの者が無き者となり得ないことを、読者に思い起こさせる。ときとして背筋を走るぞくっと寒いものの正体は、この孤影に起因する。甘美に浸る身体に不安の兆しを起こさせるもの。それは捨てても捨てきれない個という、安房直子の「一人ぼっち」への感慨なのではないか。

 

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安房直子は、自分の幼い頃の姿を「子どもの頃どこへ行っても、よそ者の転校生として、ものめずらしくながめられ、やっと慣れてお友達ができると、また引っ越しという具合でした。その上、私は、なかなか他人になじめない子供でしたから、みんなが、にぎやかに遊んでいるのを、すみっこに、ぽつんとつっ立って、ながめていたものです。そんな自分の姿が、今一枚の絵のように鮮明に思い出されます。」といったように振り返ることが多い。

一人ぼっちの感慨は、破綻のない日常生活を粛々と営む安房直子に、ひたすら情念の埋め合わせを求めたのではないか。「一面の」「見わたすかぎり」とは、状況を俯瞰する孤影の理性でもあり、またそのもの以外視野に入らなくなっている孤影の理性喪失の兆しでもあるという両義性をはらむ。覆い尽くすもの、埋め尽くすものにすべてが、消し去られようとする中で、個の存在だけはどうしても消し去れないという相克に、安房直子ファンタジーの神秘が宿ると思える。歓喜を味わいながらも奈落の淵を覗く、群生に魅了される主人公の孤独が、安房直子の核に疼いていたのではないか。


(以上、作品論より一部抜粋させて頂きました)

 

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  休憩を挟んで、懇談に移りました。秋元さん、石井さんへの、沢山の賛辞が寄せられ    ました。以下に少々、皆さんのお話をご紹介させて頂きます。

 

Nさん:「花びらづくし」は、安房さんが32歳の時、同人誌「木の花」に発表された作              品で、私は編集を担当していたので、忘れられない作品です。主婦として母と                しての日常の生活をこなしながら、異界のイメージにも思いを馳せていた安房                さんの、そのことの重みを感じます。

Mさん:石井さんのお話には、同感するところが沢山ありました。気づいていなかった              ことも、お話を伺って、こういう見方もあると納得しました。

Iさん:「花豆の会」の最初の頃の集会では、“安房さんの気配”のようなものを感じて               いましたが、夫君の峰岸明さんが亡くなられた後からは、安房さんもいなくなっ            たように思えました。それが今日の会では、安房さんがなぜかまた、ここに戻っ           てきてくれたように感じられ、うれしかったです。

Aさん:石井さんの「群生と孤影」という視点に美しさを感じて、素晴らしいと思いま             した。また、もう一つの思いがあります。女性が何歳になっても持っているいわ             ゆる「オトメな心」を、安房さんも見つめて、それをファンタジーとして仕立て            たことが、この作品の大きな特徴だと思います。

 

    今回は懇談に時間を多く取ったのですが、魅力的でたのしいお話しが途切れず、

 活気に満ちたひとときを過ごしました。

              

                                             f:id:lilac-dori:20160430123058p:plain

                       

 

    ライラック通りの会 これからの予定

 

1. 9月の会

 「北風のわすれたハンカチ」をめぐって朗読と懇談

   ~たちばなゆきさんによる朗読と懇談の会~

    日時:2016年9月上旬の土日のいずれかの日の午後

    場所:西東京市保谷駅前公民館第2集会室(予定)

         懇談:参加者のみなさん全員

      たちばなゆきさん:朗読療法家・ナレーター・カウンセラー

        放送では、語り手としてNHKの朗読・ドキュメンタリー番組に多数出。

   「心に響く声のふしぎ」をテーマに、朗読公演活動をされています。

   

  *たちばなゆきさんからのメッセージ

  「北風のわすれたハンカチ」はとても素敵な作品です。ふだん見えなかった

         世界が物語りを通して、薄いベールの向こうに見えてきます。

         ぜひご一緒に心遊ばせてみませんか。

  *会場の申し込みと抽選は、7月に行われるため、現時点では日程を決めるこ

   とができないのです。会場が取れ次第、一斉メールや郵便でお知らせします。

 

2. 2017年 1月の会

  朗読を中心に、永田陽二さんによる企画を鋭意準備中

       日時:2017年1月21日(土)午後

       場所:日本女子大学同窓会館 桜楓会館

                     〈窓越しに木々の緑が見える落ち着いた部屋です〉

   

                                       f:id:lilac-dori:20160430123140p:plain

 

=会計報告=

1. ライラック通りの会 2015年度下半期(10月~3月)の会計報告

収入

摘要

金額(円)

前期残高

14,210

寄付(4名)

40,000

カンパ(多くの会員)

10,900

送料負担(切手)

1,132

1/17安房文庫の会残金

980

67,222

 [寄付をいただいた方]    20,000円 1名、 10,000円1名、 5,000円 2名

[カンパをいただいた方] 安房文庫に出席された多数の方々と送金して頂いた方1名

 支出

摘要

金額(円)

通信費(ブログ郵送版②③ほか)

6,707

謝礼(ブログ更新2回)

10,000

世話人交通費(4回×人)

4,536

会合費補助(今後の計画打ち合わせほか)

7,740

事務費

791

29,774

収支

2016年3月31日現在 残高

37,448

 

2. 117安房直子文庫の会の会計

収入

摘要

金額(円)

参加費(11名)

11,000

11,000

注)この会場でいただいたご寄付とカンパは、上記1のライラックの会の会計に計上しています。

支出

摘要

金額(円)

謝礼(朗読)

5,000

お茶代

1,380

資料代(カラーコピー)

3,640

10,020

収支

 残高

980

注)この残金は、上記1のライラックの会の会計に計上しています。

 

                                          f:id:lilac-dori:20160430123231p:plain

 

 

お知らせ= ご連絡は メールまたは郵送版事務局までどうぞ 🌷

.安房直子さんが西東京市「郷土にゆかりのある人々」の1人として紹介されました。

 2月に発行された、図書館の開館40周年記念誌「縁<ゆかり>」誌です。4月の全体会で、ご覧頂きました。原稿作成に当たり、ライラック通りの会がお手伝いしました。

 

2. 冊子「ライラックの小道」(仮称)1号を8月末頃に、発行予定です。

 安房直子さんに関する貴重な記録・原稿等を、会として収録、保存すると共に、広く会員の皆様にもお読み頂きたいと、企画しました。 1~2年に1回、 数冊のみの発行を考えています。

 

1号の主な内容<予定>は、次の通りです。

(1)会のあゆみ 

(2)転載原稿4篇(「日月」 2011.01発行 8号 特集安房直子  日本女子大学より)

   ① 群生と孤影の幻想~「花びらづくし」考   石井光恵

     4月5日全体会でお話いただいた作品論を、全文掲載。

   ② 安房作品の背景としてのご家族のことなど  蓮見けい

     実父母、養父母、直子さんご一家、の写真、および、第2回詩と童話祭りの

     集合写真も掲載、安房さんの原風景ともいえるエピソードも添えて紹介。 

   ③ 童話作家として歩んだ道 南史子

     少女の頃からの安房さんが、やがて数々の賞を受賞され、惜しまれつつ亡く

     なられるまでの、記録的エッセイ。

   ④ 『天の鹿』のみゆきと安房さん 生沢あゆむ

     “みゆき”に内在化されているように思える、純真無垢な魂と秘められた情熱

     の、素顔の安房さんを描いたエッセイ。

            

    *発行8月末予定 頒価未定(制作実費、カンパ、送料共) 予約申込

    (予約頒価1000円)オンデマンド印刷予定 約30頁 B5判( 182×257)

 

    *会員の方は、予約申し込み(6月末日まで)ができます。

     awanaoko.lilac ☆gmail.com (☆を@に変えて)または郵送版事務局迄  

    ①冊子予約希望、②お名前、③送付先(住所)、をお知らせください。 

    代金は、冊子の到着後にお振り込み頂きます。

 

 3. 安房作品の 子どもたちを対象とした企画を実現できないかと考えています

 子どもさんも楽しめる安房作品の「お楽しみ劇場」・・・参加人数が少なくても、

 年に1回とか、回数を重ねることにより、知名度を上げていく?関心のある方、

 アイデアをお持ちの方、お申し出ください。

 

4. 安房作品「ハンカチの上の花畑」のドラマ仕立ての朗読脚本を書いてくださる方を

  探しています

 「きくや」の酒蔵での、小人一家とよしおさんのドラマが実現?・・・古いホンモノの

  酒蔵でのお芝居・・・とすると、小人たちの場面は、CG映像?・・・

  どなたかお知り合い、いませんか? わくわく ^ ^。

 

5.  カンパ、寄附のご送金は、下記にお願いいたします。

 ゆうちょ銀行  店番008 普通預金 口座番号3317591 名称ライラックドオリノカイ 

 

6. ブログを読みにくい方は、お申し出ください。 「郵送版」をお送りします。

 

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ひとこと さいごに

♪ では、9月の会で、お会いできますように。お元気で! 

 

第2回全体会ご案内 ~朗読とお話と懇談~

 

4月9日(土) 2:00~5:00
保谷駅前公民館 第2集会室 参加費1500円  定員36名

 
朗読   安房直子作 「はなびらづくし」         秋元 紀子
お話 「花びらづくし」考~群生と孤影の幻想   石井光恵
懇談 「花びらづくし」の物語を中心に、またはどんなお話でも

      ~~~全国からの 皆様のご参加をお待ちしています~~~

 

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”するとこのとき、花ふぶきの奥から、しゃん、しゃん、しゃん、しゃん・・・・

ふしぎな音が伝わって・・・・”  第2回全体会は、「はなびらづくし」を語っていただきます。石井光恵さん(日本女子大学児童学科教授)の 学内誌に掲載された「はなびらづくし考」を読んだ世話人が、ぜひ!とお願いして、この企画が実現しました。


学生時代に、安房さんとも研究室で一緒におしゃべりをしていた仲の、きさくで誠実な先生でいらっしゃいます。 朗読は、<安房ワールドファンタジー 秋元紀子ひとり語り>を長年続けていらっしゃる 秋元紀子さんです。

折しもきっと桜は満開(のはず)。 みなさまそれぞれの桜をまとって、お集まりください。今回は、懇談の時間を長めに設けます。
 
お申し込みは、明日からお受けします。
①メールでawanaoko.lilac@gmail.com

②郵便で郵送版事務局(ネット上は非公開) までどうぞ。

会場の場所は、保谷駅前、西友の上です。
池袋から保谷(ほうや)までは、西武池袋線で20分前後です。

 

 

          ~~~~~

            ご 報 告      

  文 庫

そのイメージは。。。

安房さんの著書の書棚が並んでいる、夢に見る「文庫の部屋」。。。

こで静かに、安房さんの本、雑誌、単行本未収録作品を読んで。。。

お茶の時間になったら、安房さんが愛した紅茶とクッキーを頂きながら、

リラックスして話します、好きな安房作品のこと、自分のこと。。。

そして時には、安房作品についての話し合いや勉強会をしましょう。

安房さんの世界をもっと深く知りたい、分かち合いたい時に。。。

 

ライラック通りの会 文 庫 会 ≪1≫

~単行本未収録作品、絵本や雑誌の作品、を読む・語る~

20161月17日(日) 2:00~4:30  終了済

保谷駅前公民館 第2集会室 参加者15名
朗読 近江竹生 お話 蓮見けい 

 
プログラム

 *紹介 安房直子さんの絵本・雑誌作品の描画等4点を楽しむ

    きのはのおてがみ 朝倉攝 絵 =小林文庫蔵=
     昭和43(1968).12.1発行 「あそび」静岡福祉事業協会 8頁
     くすりやのこうちゃんに、うさぎから木の葉のお手紙がとどきました。こうちゃんは・・・

   あきのはまべ 林静一 絵 =小林文庫蔵= 
     1990.9.19発行 「いちごえほん」9 サンリオ 7頁  
     秋の浜辺は、夏の忘れ物がいっぱい。お母さんと子どものカニは、闇の中に光る花火に・・・
   ちいさなちいさなおひなさま  ひろかわさえこ 絵  =小林文庫蔵=
     1991.3.19発行 「いちごえほん」3 サンリオ 15頁
     世界でいちばん小さなおひなさま。ひな祭りの夜中に、あやこはおひなさまと・・・ 
   安房直子 残された物語 赤い鳥文学賞受賞記念  =小林文庫蔵=
     1994.8.1発行 「MOE」 白泉社 4頁     
     安房さんの世界を、写真と共に紹介。味戸ケイコさん、南塚直子さんの追悼の談話も掲載。

 

                f:id:lilac-dori:20160206180530j:plain

*特集 安房作品が語る〝まわり″ 

 朗読    「ひぐれのひまわり」  近江竹生   

描画鑑賞  味戸ケイコ〝ひぐれのひまわり″イラスト3作

         (絵の説明文と順。アンダラインは、初出画)

「ひぐれのひまわり」1976(昭和51年).9「詩とメルヘン」サンリオp10-19

 1-「暗色のひまわり」 2-走って行く少年 3-流れるゆうぐれの色の川 

 4-胸騒ぎする少女 5-川辺と空をいく鳥 6-たゆたうボート

「ひぐれのひまわり」追悼1993(平成17年).6「詩とメルヘン」サンリオp40-43 

 1-帽子のひまわりの少女 2-不安げな少女の顔 3-暗い舟

「ひぐれのひまわり」2005(平成17年).12 「夢の果て-安房直子17の物語」瑞雲社

 p69-82 「詩とメルヘン」1974-1986にわたり掲載された作品17編のうちの1作。

 1-走って行く少年 2-「暗色のひまわり」3-白いシャツの少年 4-たゆたうボート

 

お話 「ひまわり」、「向日葵」、そして「ひぐれのひまわり」

   ~夏のおわりに、小さくしおれて枯れた・・・美のきわみ、ラスト (要旨 あり)

                         蓮見けい

 *懇談 みんなで語る 安房作品 

                           閉会4:50

             f:id:lilac-dori:20150612194619j:plain

              ~ 会のようす ~ 

  こぢんまりとした、いい会でした。また次回、たのしくお話ししましょう!

 

 安房直子さんの絵本・雑誌作品の、描画等4点 は 新鮮な驚きがありました。

3,4歳ぐらいの子どもたちに、安房さんがそっと差し出した小さな作品たち。朝倉攝さんや林静一さんが、いわゆる月刊雑誌の絵本に絵を描かれていることに、感嘆しました。心に残る丁寧に語られたお話と絵、宝物のような雑誌です。(まだまだ、たくさんあるようです) 「安房直子 残された物語」には、素(す)の安房さんの笑顔の写真2葉が掲載されていて、珍しい追悼特集です。安房さんを悼むエッセイも感動。

 

朗読 「ひぐれのひまわり」 に、一同、胸を打たれました。 

朗読がはじまると、一瞬の間に光景が変わって、川沿いの土手に立つひまわりの娘の、ゆうぐれの情景が広がるようでした。「作品そのものを、大切に“舞台“にのせる」魅力的な朗読、という評判でした。

 

味戸ケイコ イラスト3作〝ひぐれのひまわり″・・作品の意図を、創造的に描いたイラスト、安房さんの物語との、共にかもす美をたんのうしました。

味戸さんには、今回の「イラスト3作」を楽しむ会の企画を、事前にお話させて頂きました。そのとき改めて、味戸さんはなんと、誠実さやナイーヴな感性を持って、創造的な絵を描かれておられるのだろう、と感動しました。H

圧巻は、1976年の、ぜいたくにイラスト頁を設けた作品、そしてリアルな墨色のひまわり。。。1993年に初登場した「ひまわりの少女」の表情の、強い印象は忘れられない、という人も。2005年の絵には、白いシャツの少年も描かれています。味戸さんの、作品への深い愛と読み込み、描写力には、圧倒されるという声もしきりでした。

 

お話 「ひまわり」、「向日葵」、そして「ひぐれのひまわり」 

作品の紹介とお話が、1時間では盛りだくさんで消化不良だった。ので、レジュメを、帰ってからゆっくり読みます、という方が多かったことは、残念、不十分でごめんなさい。 お暇なかた、以下の「要旨」お読みくださいね。 H 

              

             ~~~~~~

 

お話 「ひまわり」、「向日葵」、そして「ひぐれのひまわり」 要旨  

   ~夏のおわりに、小さくしおれて枯れた ・・・美のきわみ、ラスト  蓮見けい

              以下の転載、一部転載は ご遠慮ください

#1.「ひぐれのひまわり」と15年前の作品「ひまわり」、「向日葵」をつなぐ、深い孤独

 今回お話させて頂くことは、①「ひぐれのひまわり」には、その15年前に書かれた、 “ひまわり”をモチーフ(中心的題材)にした2つのリアリズム作品があること、②感想としてよく聞かれる “「ひぐれのひまわり」は幻想的でとても惹かれる物語だけど、「孤独と不安」が美しすぎるというか、怖い印象もあり、ラストもつらい・・・”  という2点についての私見を少々、考えてみたいと思います。

 これら作品の底に流れている「対象喪失(たいしょうそうしつ=愛するものや目標にしているものを失うこと)の空虚感を描写する」ことに、作者は何を意図しているか、かねてから私は考えてみたいと思いました。不十分ながら、若い日の安房さんの書かれた美しいリアリズムに光を当てることができたこと、またファンタジー「ひぐれのひまわり」の、ゴッホのひまわりにも匹敵する(!)、究極の美を賛美できたこともうれしく、レポーターをさせて頂いて感謝でした。

さて、これらの作品が書かれた時期は、リアリズム作品の「ひまわり」は安房さんが18歳、高校3年の時。1年ほど間をおいて、改作「向日葵」は1961.10です。「ひぐれのひまわり」は1976.9の作品で、前2作とは、15年の年月があいています。ちなみに、安房さんは25歳で結婚、31歳ご長男誕生、そして「ひぐれのひまわり」は33歳で、すでに3つの文学賞を受賞されたころの作品です。

 

#2.「ひまわり」、「向日葵」の、リアルな物語に描かれた 闇と光の二極  

*物語 「ひまわり」より 

「ひまわりが燃えるように咲いた夏の日、僕はその黄色い花の下に新しい友達を見つけた。」・・・病弱で友達もいない僕に、母は少女を連れてきた。シーちゃんは僕と同い年の5歳で、「赤ちゃけた縮れ毛で、その下に、まるでびっくり箱の人形のように大きな目が光っている。」・・・女の子は怒ったように僕を見返す・・・僕にはそのぎこちない沈黙の時間が、おそろしく長く感じられた。 

「三本目のひまわりが咲いた。・・・相変わらず彼女は、来たり、来なかったり、気まぐれで、他に友達のいない僕は家にいて、ひそかにそれを待ちわびていた。」・・・「いつの間にか夏も終わりに近づいた。ひまわりの茶色い芯が、からからになってきて、あんなに明るく、お日さまの花のように咲きほこっていた黄色の花びらは、しぼんでしまった。・・・いつの間にかシーちゃんは来なくなってしまった。」 ・・・「シーちゃんはどこか知らない遠い所へ越してしまっていた。やっぱり気まぐれに、さよならも言いに来ないで・・・。」

 

*「闇」と「光」の対極を、たくみな「美の風景」として描き、そのまま終わる・・・ 

 物語の最初から、「僕」とシーちゃんの関係性がハッキリ語られます。「僕」には、この元気いっぱいの新しい友達は、何となくそら恐ろしかったといいます。二人の反対の特性、二極(にきょく)が語られ、またどこか「下町の子」との“身分の差”も感じられます。

 伸びやかで生命力に満ちたシーちゃんと内気な僕。気まぐれな彼女が遊びに来てくれるのを、僕はひたすら待っているという構図が、全体を通して語られます。でも夏の終わりに、いつの間にかシ-ちゃんは来なくなり、ひまわりも芯がカラカラになって、花びらはしぼんでしまったのでした。

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 作品「ひまわり」は、硬質で巧みな語りや「僕」の心象風景などが描かれていて、18歳の安房さんは、まるで熟年作家ふうに健筆です。「光」にあこがれる「闇」のように、病弱で臆病な「僕」は、快活なシーちゃんとの、居心地のいい場所、調和を見つけたいと思うのに、すれ違う心の動きがリアルであればあるほど、読み手はそこにどうしようもない闇と光の対極(対立)を見ます。

ふつう、ひまわりという花は、夏の終わりに茶色い花芯が力強く隆起し、無数のタネを実らせます。華麗でドラマチックなひまわりの一生は、「生命」の象徴として語られることが多いようです。でも作者は、そこに「花の死」を感じたようです。それは、僕の視界から、あっという間に消えてしまったシーちゃんの死でもあり、ひそかにシーちゃんを待ち続けた僕の死でもあります。

 

*物語  「向日葵」より 

「向日葵(ひまわり)」は、安房さんが大学1年の1961年10月、「婦人文芸」に投稿、掲載されたもので、前作「ひまわり」を改作した作品です。物語は、前半(僕とけいさんとシーちゃんの交流物語)と後半(けいさんの少女時代の回想)に、分かれていますが、今回は後半部分は省略し、後日改めて、このあたりを考えることにします。

 

「シーちゃんが初めてやってきたのは、夏休みの始まった最初の日」。「そのとき僕は、ばあやのけいさん(ばあやと呼ぶには少し若い人だったけれど)に、無理矢理、薬を飲まされようとしていて」、泣きじゃくりながら抵抗していた。・・・そんなときにひょっと泣き顔を上げたら、垣根のそばのちょうど向日葵のところに、よその女の子が立っていたのだ。・・・

 ある日シーちゃんは、「あたしの家に遊びに来ない?」と誘ったが、僕がかぶりを振ると、「うわあいやだ。この子ひとりで来られないのよ」、「わーい弱虫、弱虫」と何度も何度もふしをつけて歌いながら、帰ってしまった。・・・

  砂遊びをしながら彼女は、キラキラ光る石を掘り当てた。・・・「これきっとねうちものよ」・・・「誰か昔の人が埋めたのよ」、だからかくしておこうと、 二人は向日葵の花の下に穴を掘った。「夏は終わりに近かったけれど、向日葵は、黄色い花びらをかっとお日様のほうに向けてシーちゃんの背丈よりも高かった。・・・「絶対誰にも言いっこなしよ」 彼女はちょっときつい目をして、小指をつき出した。向日葵の花をひい、ふう、みい、よお、と数えて、「五つ目の下よ。ちゃんと覚えといて」と言った。

「あれからまもなくけいさんは、暇をとってしまった。・・・僕が学校へ通い始めた頃、もうシーちゃんはどこかへ引っ越してしまっていた。・・・けれど夏が来ると、僕は見事に咲きそろった向日葵を見ながら、ふと、今にもあの藪睨みの女の子が垣根をくぐって、いつかの宝物を掘り出しに来そうな気がしてならない。」 

 

* リアリズムで語ることは、リアリズムでしか 解決を見いだせない・・・  

1. 行ってしまった けいさん、そしてシ-ちゃんも・・・

坊っちゃん」と「ばあや」という身分差が、二人の交流の土台になって、豊かに展開します。 シーちゃんは、この町に越してきたばかりで三年生。僕は、病気で二年遅れの一年生、でも二人とも、学校を休んでいます。この、勝ち気そうでちょっと藪にらみの大きな目をした女の子に、僕は何かしら怖いような気持ちを感じます。明るさや野性味にあふれるシ-ちゃんは、僕には、はらはらする気の置けない相手なのでした。

シーちゃんが引っ越してしまった後、僕は、(シーちゃんと言わず)あの藪睨みの女の子が、ふとやって来そうな気がすると、距離を置いた言い方で、でも彼女を懐かしんでいます。「暇」をとってしまったけいさんも、「切ないほどなつかしい」と、僕は言います。精一杯僕が生きた世界が、こうして無情に、引き裂かれていったのです。

 

2. 母とばあやのけいさんの関係と、作者の意図は? 

 前作「ひまわり」では、母親がシーちゃんを家に連れて来たのでしたが、本作では、僕に深く関わる人物は、若めの「ばあや」に替わっています。また僕が「白い割烹着の袖に顔をうずめ」たのも、本作では、「母」から「ばあや」に換わっています。さらに、前作では「母」は、シーちゃんを連れて来ただけの存在として小さく描かれていたのに、本作では「母代わりの関わり」をする主要な人物は「ばあや」となっています。母親は、2カ所に少しだけ登場するだけです。母の不在だけでなく、物語の終わりでは、ばあやも「暇」をとって僕の前からいなくなってしまいます。作者は、「母性」の喪失を、テーマとしてはっきり打ち出しています。

 

3.「人と人の和解や統合を、リアリズムで書くのは難しい」こと?

 作家の藤澤成光さんは、こう言われています。安房さんは、「こうした(リアリズムの)スタイルで物語を書くことは、このときたった一度きりで放棄している。彼女は、人と人とが孤独という状態で乖離する(はなればなれになる)意識の問題は、リアリズムの想像力を用いる形式の営みに、どうしてもしたくなかった」のだと。(「こころが織りなすファンタジー 安房直子の領域」 テラインク2004 ) たしかに安房さんは、「人と人が孤独を越え真の和解や仲良くなる=関係性の統合を、リアリズムで書くのは難しい」と、感じたのかもしれません。

 

#3.「ひぐれのひまわり」の圧倒的な魅力、「本当の死」だけが「再生」を示す 

*物語 「ひぐれのひまわり」より

ひまわりは、ひぐれに夢を見るのです。・・・「どこに行くの?そんなに急いで」/ある日の夢の中で、ひまわりは、さけびました。・・・けれど、少年には、花の声が聞こえないらしいのです。・・・それなのにひまわりは、もう幾日も同じ夢を見て、/同じ言葉を、少年にかけていたのでした。・・・あるゆうぐれ。/夢の中で、ひまわりは、ひとりの生きた娘になりました。

 

・・・「どこに行くの?そんなに急いで」/少年はぴたりと止まりました。/「聞こえたのね!」/娘はおどりあがりました。/ひまわりの娘は、明るく笑いました。/たちまち、彼女の心に、真昼の歓喜が、よみがえって来たのです。/輝く夏の太陽を、全身にあびて笑い続ける黄色い花の、かわいた明るさが、この娘の全身にみなぎりました。 

 

あたしも、おどりこになれたらいいと、ひまわりは思いました。/黄色いスカートをひろげて踊る自分の姿を、/娘は、うっとりと目にうかべました。/けれども、踊っているその足もとから、/太陽よりも、もっと赤い炎が、めらめら這いのぼって来て、/スカートを燃やすのです。・・・

「助けて。助けて、助けて」/少年は、ひくくするどく、そうさけびました。・・・「追いかけられてるんだ!」・・・その目は、おびえたように、大きく見ひらかれていました。・・・  けれどこの時、あのボートの中に、もう少年の姿はありませんでした。・・・ひまわりの娘は、/ほのかな水あかりの中にいつまでも立ちつくしていました。

 

このできごとが、ひぐれの夢の中の事なのか、本当の事なのか、それとも/夢と現実のまじりあったものなのか、ひまわりには、わかりません。/わからないままに、ひまわりはその夏をすごし、/夏のおわりに、小さくしおれて枯れました。

 

*「死と再生」への思いや 、ユングの「全体性の獲得」を越える、安房さんの勇気 「ひまわりの死」 

1.「対象喪失」のきわみ・・・孤独な魂が、もっと孤独に

 自分の声が少年に聞こえて、娘はおどりあがったのです。けれども真昼の歓喜がよみがえったのは、ひまわりの娘だけでした。少年は別の、町の劇場の「おどりこ」に、心を寄せていました。「あたしもおどりこになれたらいいのに」と、娘は切なく思うのです。その時少年が走ってきました。おどりこを刺した少年は、追われているのでした。

「かくれなさい、あのボートの中に」 娘は、少年を守ろうと決めます。追ってきた人々に、「あっちへ行ったわ。どんどん走っていったわ」と言い終えると、娘の心に、言いようのない喜びが、わき上がってきました。・・・けれどこの時、あのボートの中には、もう少年の姿は無かったのです。

対象喪失」のきわみ・・・孤独な魂が、もっと孤独になる物語、前の2作と同じテーマです。ひまわりの花は「死と再生」ではなく、ただむなしく「死」んだのでした。

 

2.「孤独と不安」の心の闇を 掘って掘って掘り続けて、「無意識との対話」を“自力”で行なう

3つの “ひまわり”が、あえて「タネを実らせないまま、むなしく死ぬ」物語として描かれているのは、理由があってのことのようです。それは、(「母性の喪失」そのものに深く向き合うことや、その服喪の作業・モーニングワークをおこなう以前の、)多くの芸術家の仕事がそうであるように、安房さんにも強い意図があったのだと思います。

それは、「孤独と不安」の心の闇を、勇敢かつ真摯に、掘って掘って掘り続けて、「無意識との対話」を、“自力”で行なうことです。

現代の創造性に富む作家や芸術家は「無意識の思い」を知って、“自力”で「無意識と意識の思いを、納得のいく一つのものに統合させる術(すべ)」を会得しているようです。「ひぐれのひまわり」も、その一つだと思います。安房さんの「無意識の意識化」を、藤澤さんは「手品のような魔法」と、言い当てています。

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3.ユングが創始した、「無意識との対話」をおこなうアクティヴ・イマジネーション 

/ 能動的想像法という技法もある

 人と人の真の和解や統合は、リアルな世界=意識の世界だけで解決しようとすると難しいことが多いのですが、C.ユングは、「対立した関係を一つに統合する」アクティヴ・イマジネーション、能動的想像を「技法」として行うやり方を創始しました。それは、「心に浮かぶイメージ(無意識の思い)に、熱心に能動的(アクティヴ)に働きかけ問いかけていくことにより、無意識と意識の思いの統合が得られる」というものです。アクティヴ・イマジネーション/能動的想像法は、実は有史以前から、占い師や祈祷師、シャーマンなどに使われていたといいますが、近代では創造的な芸術家たちによって、ごく自然に「ものを作り出す」過程で用いられています。

 

ゴッホも、安房さんも語る ・・・「本当の死」だけが、「魂の再生」を指し示す 

1.ゴッホの描くひまわりは、「太陽という理想」と「地上の現実」の両方を抱え持つ「引き裂かれた姿」

 哲学者のG.バタイユは、ゴッホの描く「ひまわり」を論評して、こう言っています。「「理想」という概念が 「自己の現実」という概念に対立するように、「天の太陽」は「枯れた花」に対立する。わかりやすく云えば、ひまわりとは、「太陽という理想」と「地上の現実」とに引き裂かれた、両義的(りょうぎてき)存在を象徴する」と。        www.seijo.ac.jp/pdf/graduate/gslit/azur/13/azur-013-07.pdf 

「両義的存在」とは、「二つの互いに反対の意味を同時に持つもの」のことです。ゴッホのひまわりは、「太陽という理想」と「地上の現実」の、「対立する両方を併せ持つ存在」を描いている、というのです。そこには、「この世的な美の概念」ではない、ひまわりが語る「引き裂かれた姿」が描かれている・・・そこに見手は、花の「真実味」による「新たな美」が創造されているのを見ます。

 

2.芸術家たちは、「引き裂かれた苦悩」をこそ、テーマに描く

 リアルな世界、つまり「意識」の世界では解決できない「問題」は、「無意識」との対話によってだけ、「統合」へと近づくことができます。例えば私たちの「意識」(自我)が「孤独や不安」を感じるとき、心の底の底にある「無意識の情動」にアクティヴ(能動的)に問いかけると、言葉を持たない無意識からのメッセージ(イメージ)は、「意識」にとっては思いもよらない、真実味が感じられるものとして、示されます。なぜならそれは、「意識」とは違って(常識や対人ストレスなど、「真実の思い」を歪曲したり隠したりしがちな「意識」とは違って)、純粋に「思いそのもの」をイメージ(心像、形象)として示すからです。

 しかし「孤独」、藤澤さんの言葉では「人との乖離」は、誰もがみんな(人類全体の)共有するテーマで、芸術家固有のものではありません。現実には、誰もが孤独を解消させて安心を得たいと望みはするけれど、「悟りを開いて安心立命する」ことは、なかなか難しいわけです。それゆえ、繊細さや感性の高い芸術家たちは、「引き裂かれる苦悩」を、テーマにして作品を描いています。

 

3.そこに私たちは、普遍的な「魂の再生」を指し示す光があると感じる

「ひまわりの少女」の場合も、そうです。一瞬、「言いようのないよろこびが、ゆっくりと湧きあがってきた」、それもつかの間、ボートの中には、少女が思いを寄せた少年の姿はなかった・・・。何という無情! そのとき作者の能動的想像は広がり、無意識の思いが聞こえたことでしょう。「ここにはどんな慰めも癒しもない。おまえはただ、本当に死ぬ(自我を無くす)のだ」と。

 そんな恐ろしいこと!と自我は反発します。自分を慰めたり癒したりするもの、例えばおいしいケーキだとかぬいぐるみだとか、過眠、過食…でもでも、・・・そのようなごまかしは、深い対象喪失には何の意味も無いことを、自我(自分)は知っています。 

そして、だんだん互いに折り合い、意識(自我)は無意識の提案を受け入れていきます。「・・・わからないままに、ひまわりはその夏をすごし、・・・小さくしおれて枯れました」 という、「喪失の極み」がここに描かれています。自己(自我)を非自我(自己主張する自分ではないもの)に明け渡した時に、ほんとうの「死」は完成し、そこに「再生」のための光が見え始めます。ゴッホ安房さんも、“自力”での能動的想像によって、この魂の再生の方法を知ったに違いないように思います。

そこには、あのゴッホのひまわりが放つ、無骨さ(痛み)からにじみ出る新たな「美」が、究極の光としてあらわれます。あるいはまた、このレジュメの最初に紹介した読者が、“「ひぐれのひまわり」は幻想的でとても惹かれる物語だけど、「孤独と不安」が美しすぎるというか、怖い印象もあり、ラストがつらい” という時、そこにこそ「孤独の極み」が、「美の力」となって現れます。その美は、読み手の私たちの魂を震わせるので、それとわかります。そこには、普遍的な光、「魂の再生」を指し示す光があると感じます。          

                                終わり

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=お知らせ= ご連絡は メールまたは郵送版事務局までどうぞ 🌷

安房直子さんが、西東京市「郷土にゆかりのある人々」の1人として紹介されます。

西東京市中央図書館の開館40周年記念誌「縁<ゆかり>」誌上で、安房直子さんが紹介されます。3月に発行予定の同記念誌は、中央図書館にて無料でお分けするそうですが、4月の全体会で、ご覧いただけます。掲載に当たり、ライラック通りの会・資料室が、原稿作成のお手伝いをさせていただきました。

②【訃報】会員・秋元瑤様(秋元富子様) 2016.01.09 86歳 にて、ご病気療養中のところ、お亡くなりになりました。心より ご冥福をお祈り申し上げます。

③「安房直子単行本未収録作品 勉強会」メンバー募集中です。

安房さんの「単行本未収録作品」に関心がある方、中心になってくださる方、募集中です。カンペキな収集と共に、どのような形での印刷・出版が可能か、話し合っていければと思います。(担当世話人 蓮見)

安房作品の 子どもたちを対象とした企画を実現できないかと考え中です。

まず少人数の子どもを対象に・・・と、有志の方と少しずつ計画中です。子どもとの企画に関心のある方、アイデアをお持ちの方、お申し出ください。

安房作品「ハンカチの上の花畑」のドラマ仕立ての朗読脚本を書いてくださる方を探しています「きくや」の酒蔵での、小人一家とよしおさんの物語が実現?・・・わくわくしますね。

⑥ カンパ、寄附を有難うございます。“財政難”の折、感謝です。

 ご送金は、下記にお願いいたします。

 ゆうちょ銀行  店番008 普通預金 口座番号3317591  名称ライラックドオリノカイ 

⑦ブログをご覧になりにくい方は、お申し出ください。

 「ブログ郵送版」をお送りします。

 

ひとこと さいごに…

♪ 次回は、4月の全体会を予定しています。このところ、会員の二人の方がサポートしくくださり、大変助かっています。みんなで作るみんなのための、安房さんの世界を広める会楽しむ会、になりますように。。。